ショート | ナノ
「で、どうしたんすか?」
どうしたもこうしたもない。
一体どうしたら光に相談なんかできるものか。
"あなたが好きだけど片思いで辛いです"なんて。
事の発端は私が屋上で泣いていたことなのだけれど、
もちろん光が屋上にいるなんて知らなくて。
私がずびずび泣いていると、給水塔の後ろから光が現れた。
「先輩なに泣いてるんすか」
「泣いてないし」
「それなら別に構わないっすけど、まぁ…」
「?」
「話ぐらい聞きますよ」
好きな人に恋愛相談なんて馬鹿みたい、とは思いながらも私は口を開いていた。
「好きな人がいるんだけど…」
それは君なんだけど。
「…でもその人には好きな人がいるんだって」
そう、それを聞いてしまったのは今朝の朝練の後。
何やら恋バナで盛り上がってる中、謙也が光に話を振ったのだ。
"いますけど"
好きな子がいるかどうかの質問だったが確かに光はそう答えていた。
「…なーんて、そんな事言われても困るよね」
座ってフェンスに寄りかかりながら、隣にいる光を横目で見た。
光は無表情で少し上を向いていて、
その目には何が映っているのか、とか
彼が誰を思っているのか、とか
考えたらまた切なくやるせなく
涙腺は既に制御不能
隣にいる人への気持ちがひたすらに溢れ出していた。
「…はぁ」
光の口から溜め息が零れた。
「…ほんと先輩は阿呆っすわ」
えっ、と思ったときには彼の手により涙は拭われていて
「その好きな人って、俺っすよね?」
そう言われた瞬間にとてつもなく恥ずかしくなったけど、
私が顔を逸らせなかったのは
彼が初めてみる表情をしていたから。
「違います?」
否定なんてできずに彼の目を見つめた。
すると彼は肯定の意味を察したのか、
ふっと優しく笑った。
「なら、先輩は無く必要なんてないじゃないっすか」
ああ、
「だって先輩は」
もう
「俺と両思いなんすから」
だいすきだ。
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