おとこのこって なにでできてるの?
笑いの絶えない教室の中。真中尊という生徒は、いつも静かに笑っている。
比較的一緒に居る連中が濃い面々なせいだろうか、控えめで目立たない。
その上、よく頼まれごとをされている姿も多く見る。
頼まれたら「ノー」と言えない性質なのだろう。
加えて、嫌な表情を見せないから、余計な仕事が増えることとなるのだろう。
損な性格をしていると、思っていた。
人畜無害。そんな印象の強い彼が最近変わった。
そんな噂を耳にした。
校内で最も部員が少なく活動日も週一とやる気のない科学部。
滅多にやってこない部員は、目の前の実験よりも課題のノートへと向かう。
なんでも、クラスメイトが宿題を見せてくれなくなったとか。
あの、「ノー」と言えない真中が。
やっていないから、と断られたのだという。
「それは自分の課題をやっていないあなたが悪いのでは?」
「仰せのとおりです」
自分で課題を行う癖がついて良かっただろう。
実験台に顔を乗せて唸る生徒を眺め、フラスコの中で煮立った液体を観察する。
「そういえば、今日、真中くん怒られてましたよ」
「へぇ〜。意外だね」
「教室にカエル連れ込んでたせいなんですけど」
戸外で行った体育の時間に見つけたらしい。
それを東と囲んで遊んでいた、とのこと。
空のペットボトルを改造して簡易的に作った虫カゴに入れていたらしいが、彼らが教室を離れた昼休みの間に、見事脱走を果たした。
教室の大半を占めていたクラス内の女子が騒ぐのも無理はない。
「女子は苦手な子多いだろうねぇ」
「私、見るだけならいいんですけど、触るのが無理」
教室に混乱を招いた種として、担任に絞られた真中と東は、不満な様子で元の場所に返しに行ったらしい。
滅多に見られない真中の不機嫌顔。珍獣並みの希少さだったという。
「真中も男の子だったってことでいいんじゃない」
男の子はカエルとカタツムリと子犬のしっぽでできているっていうじゃない。
目の前の生徒は、元ネタを知らない。
大きな目を丸めて小首を傾げ。
「……南風原がカタツムリで、東が子犬ってこと?」
「そうじゃないけど、まあ、そうかな」
その後。
教室内で、テントウムシの幼虫が大量発生する事件が起きる。
容疑者として真中らが担任に呼び出されたのは、それから数日も経たぬうちの出来事だった。
end
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