※引退後捏造

立場が彼をそうしたのか、彼が望んでそうなったのか。この1年間を輪の外から眺めていた私には結局のところ本質はわからない。けれど彼は、私が知る高校3年生の誰よりも大人の男だった。
おちゃらけた態度も、わかりやすい嫉妬も見せていたけれど、バレーに向き合う彼は、誰よりもストイックで、芯の強さのある男だったし、その切替ができる精神力を持つ18歳は早々いないはず。
そう、格好良かった。誰よりも格好良かったんだ。そして、愛しいと思う。

「明日から何したい?」

私の問いにパチパチと瞬きをしながら沈思黙考する姿は、言い方は悪いが、まるで憑き物が落ちたようで、どこか幼く見えた。

「なまえちゃんと、放課後デートしたい。スクールバッグ肩に掛けて、駅前に新しく出来たカフェでパンケーキ食べて、雑貨屋でお揃いの何か買って、最後にプリクラ撮るの。そんで、」

ポロリと長い下睫を涙が伝うから、私の喉の奥も焼けるように熱くなる。思わず自分よりひと回りもふた回りも大きな体躯を抱き寄せた。腕を回してぎゅうと抱きしめると、たくさんのものを背負いこんでた背中は思っていたより小さかった。

「及川がやりたいこと、明日から全部やろう」
「なまえも一緒?」
「もちろん」
「えへ、やったー、俺ね行ってみたいラブホあるんだ」
「………………行こう」
「次の日の朝練とか気にしないでね、お昼までなまえとベッドの中でイチャイチャするの夢だったんだ」
「うん」

枯れるまで、枯れ果てるまで泣いてしまえ。泣き疲れて眠ってしまえ。目が覚めたら及川は子供に戻る。それは新しい世界のはじまり。愛する男のその瞬間、隣にいることができる喜びたるや。


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