ご飯も食べて、自室でのんびりしていた。折角のゴールデンウィークだし、このまま夜更かしでもしようかなあ。そういえば、ダンジョンのラスボス詰んだままだったし。なんてぼんやり考えた。お母さんには怒られるかもしれないけど。そうと決まれば。携帯ゲーム機を取り出して充電コードに繋ぐ。きっとお風呂から上がったころには充電も終わってると思う。チラリと携帯を見てみる。携帯のロック画面は相変わらず電子歌姫が笑いかけてくれるだけ。可愛いけど、でも…ちょっとがっくりと肩を落とした。合宿って、言ってたし、しょうがないか。もやもやした感情をぶんぶんと頭を振って振り落す。携帯も充電器に繋げて、お風呂場に向かった。




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ドライヤーで乾かした髪を軽く手で整えながら部屋に戻った。いや誰に会うとかそういうんじゃないけど。ふと、携帯がランプを光らせているのが目に入った。なんだろ、メールかな。メルマガとかかもしんない。ホームボタンを押して見えた通知画面に、ちょっとだけびっくりした。『不在着信あり』相手はちょっとだけ声が聞きたいと思っていた相手で。出るかな、寝てるかも…なんて不安に鳴りながら発信ボタンを押してみる。

「もしもし…?」

「あ!ごっごめんね、電話、気付かなくって……」

「うん…大丈夫。」

相手―研磨くんは、いつものちょっと怠そうな声でそう言ってくれた。連絡は移動のときちょっとだけしていた。時間出来たら、連絡する。待ってるね。なんて、トーク画面はそれで終わっていた。試合ばっかりで疲れてると思って、ここ数日連絡はあきらめていたから、ちょっと…だいぶ、嬉しい。

「明日最終日だよね?宮城、どう?」

「どう…うん、そっちみたいに煩くないから、ちょっと変な感じ…」

田舎ってことなのかなあ。確かに東京は都会で、どこに行っても人しかいないし、ビルはどれも大きいし、車の通りも多すぎてうるさいと思う。宮城とか、ちょっと都外に行くと、そんな感じなのかぁ。きっと研磨くんもちょっとは心安らぐって感じなのかな。あ、でも合宿だからそんなこともないのか。

「疲れてない?」

「疲れてるけど…なんか、なまえちゃんの声、聞きたかったから…」

「…私もね、研磨くんと同じこと考えてたよ」

以心伝心だね、テレパシー?なんてふざけて言うと、バカじゃないの。なんて返ってきた。研磨くんなりの照れ隠しだってことは分かってるから、分からないように小さく笑ってみた。なんてしてる私の顔も赤いと思うし、自分で分かるくらい口元は緩んでる。…照れパシー?

「いつも学校で会ってるから、会えないの寂しいなあって思ってて」

「…ごめん」

「研磨くんのせいじゃないよ」

部活だもん、しょうがない。ごろん、ベッドに横になってみる。手元にさっき充電したゲームが目に入った。

「もし、ゲームだったらさ。今すぐ研磨くんのいるところに、ワープ出来るのに。」

今してるゲームもそうだけど。勇者が攫われたお姫さまを助けに行く話。冒険しながら、ワープ出来る木の実を手に入れて、色んなところにワープ出来る。それなら、こうして研磨くんに会えなくて寂しいとか、考えなくて済むのに。ままならないなあ、とか、考える。

「…ゲームならさ。なまえちゃんがお姫さまだったとして。俺は勇者とか…なれないし」

「確かに、研磨くんは勇者って感じじゃないね」

「うん。…でも、ゲームじゃないから、俺、なまえちゃんと知り合って…こうやって付き合っていけてるんだと…思う」

「う、うん…」

おおうなんだなんだ。ちょっと照れてきた。

「帰ったら…すぐ会いに行くから…だから、もうちょっと、待ってて」

なんて、どこかの漫画にでも出てきそうな台詞を研磨くんが言うから。ちょっと…だいぶ照れた。すぐに反応できなくて、固まってしまう。

「……聞いてる?」

「っえ、あ、うん、聞いてる…よ…」

「…照れてる?」

「て、照れてません!」

嘘。めちゃくちゃ照れてる。さっきとは比べものにならないくらい顔は熱い。お風呂に入ったときみたいに熱い。ああ、よかった。本人が目の前にいなくって。電話越しに小さく笑う声が聞こえた。くそう、ちょっと悔しい。

「…おかえりって、言うから。早く帰ってきてね。研磨くん」

「…うん」

こうやって愛しい気持ちが募っていくなら、こんな現実世界も悪くないかなとか、頭の隅っこで考えた。


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