「あの龍!」


ある日の放課後。
部活帰りの俺を改まって呼ぶ声に振り向けば
心なしか顔を赤らめた幼馴染がいた。

「おー? どうした?それもこんな時間に帰りか?」
「あー、えーと…っ」
「?」

慌てながら何かを告げようとする彼女に
とりあえずゆっくりでいいぞー、と言ってやる。

「ありがと、ちょっと落ち着くね…」

そう言うと深呼吸をしてから
小さくあのさ、と話を切り出した。

「次の土曜日、部活休みになったって聞いたんだけどよかったら市内の方に出来たお店に行きたいなーって」
「え」


赤らめて言うその様子に思わずドキリとしてしまう。なんだよ、デ、デートってやつかコレ…!?

相手は幼馴染。
ガキの頃からずっと一緒で騒いで笑ってして
相手だぞ、何ドキっとしてんだ俺!


「ち、ちなみに何で行くんだよ、電車か?」

平然を装って訊ねれば車だよ、と答えるコイツ。
え、車?

「お前ん家のかーちゃんの車か何かか?」
「ううん?」

じゃあ誰の車だよ、
お前運転はおろか免許持ってないだろーが。
じゃあ誰の、と言おうとした矢先
ふと頭に浮かぶ車を運転できる奴。


まさか。

「姉ちゃん…!?」

そう俺の姉ちゃんだ。


「わ、正解っ!さすが龍、よくわかったねー」

けらけらと笑いながら
冴子お姉ちゃんが行きたいみたいなんだけど
荷物大変だから龍之介連れてこよっか!って。


だめかな、と聞くコイツに
思いっきりため息をつく。

ちくしょおおお…っ、それならそう早く言えよ!!
行きたいなーってお前じゃなくて
姉ちゃんがかよ!変な期待して損したじゃねえか!

「龍と冴子お姉ちゃんとお買い物なんて久しぶり!楽しみー!」

ふふっ、と柔らかく笑うコイツに
俺はため息をつく。
まだ行くなんて言ってねーだろ…
なんて思いながらもわーった!そうだな、と
頭を撫でてやった。



かなしみのとっておき
(期待しちまった俺が悪かったデス)



(「冴子ちゃんがアタシの名前だしたらアイツ行かないっていうから言うなーって」)
(くっそ、お見通しかよ…!)


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