無意識
「何であんたが庇うのよ…」
助けてやって、代わりに血を流してやった第一声がその言葉。可愛げのねー女だ、本当に。
「お前がノロノロ動いてるからだ」
「見過ごせばいいじゃない」
「お前が死んで喜ぶのは俺ぐらいしか居ねぇからな」
「何よそれ」
いつも目が離せない。敵を目の前にしていても、気はいつも女の方に削がれていて、お宝しか目にない女は銃口が自分に向いているのにも気付かずのん気で居て。
「不二子っ!!」
咄嗟に足が動いた。そして庇うようにして不二子を腕の中に包み、肩口に銃弾を受けた。
「次元!?」
「余所見っ、してんな…馬鹿野郎」
撃たれたのは幸いにも左肩。肩を撃った男と残りの敵を全員片付け、俺は膝から崩れ落ちた。
「チッ、治るまで暫くかかるな、こりゃ」
「…馬鹿ね、あんた。何であんたが庇うのよ…」
「お前がノロノロ動いてるからだ」
嫌みを言ってやるが、不二子はフゥ、と一息吐くとびりっとスカートの裾を千切った。
「早く戻りましょ」
「…あぁ」
優しくするな。
優しくされると、またお前の為に怪我すりゃ優しくされると勘違いしちまう。
ただの気紛れなその動作に翻弄されるのにもそろそろ慣れないとな。