お買いもの

今日は一味にとって久しぶりの休日。
四人揃ったアジトではルパンは新しい機械作り、次元は昼寝に五ェ門は瞑想。各々優雅な休日を過ごしていた。

本を読んでいた不二子はパタンッとそれを閉じてソファから腰を上げた。

「ちょっと買い物に行ってこようかしら」
「おー…」

軽い返事をする次元は今から夢の中へ。のん気なその姿にクスリと笑うと、目を閉じていた五ェ門が薄っすらと瞼を開いた。

「…拙者も行こう」
「あら、五ェ門も寝ていていいのよ?」
「ちと野暮用があるので、御供させていただく」

言うと斬鉄剣を持ち立ち上がる。

「日本のお土産売ってるお店は無いと思うわよ?」
「いや、大丈夫だ」
「そう?」

地中海に面するこの町には和風のお店は当たり前のように無い。五ェ門が買いだしに出る時は大抵日本の物を買いに行く時なので、一応忠告をしたものの、彼は別に用があるようだ。

「じゃあ行きましょうか」

笑いかけると五ェ門も小さく笑って頷いた。



   ***

町に出て洋服店や化粧品店を回る。だが五ェ門はどこへ行く風もなく、ただただ黙って付いて来て、荷物を持つ係りになってくれている。
用がある、という事で来たのに荷物持ちにさせるのは失礼だと思った不二子は、五ェ門の持つ荷物を半分持とうとする。五ェ門は驚いたような表情をした。

「もう大体の買い物が終わったから、五ェ門見てきていいわよ?」
「何をだ?」
「え、だって買い物しに出てきたんでしょ?お店、見てきていいわよ」
「拙者、買う用はない」
「じゃあ人捜し?」
「いや…」

昔なじみの旧友に五ェ門はふらりと会いに行く事があるからその用事かと思ったが、彼はそれにも首を振った。

疑問に思い、不二子は聞いてみた。

「じゃあどうして来たの?」

本当はとても助かっている。
商品に迷えば自分に合う物を選んでくれるし、何も言わなくても荷物を持ってくれたりして、とても助かっている。

こんなにしつこく聞くと、彼に一緒に来てほしくなかったように聞こえるかもしれないが、無理矢理連れているようにも思えてきて、彼の理由が知りたかった。
訊ねると五ェ門は困ったように眉根を寄せた。

「邪魔だったか?」
「いえ、すごく助かってるけど…なんだか無理矢理連れて来てるみたいで、申し訳なくて…」
「そんな風に思わなくていい。拙者は好きで付いてきただけだからな」

そう言ってひょいっと彼女の持っていた荷物を取り上げる。

「あっ…」
「不二子殿の荷物係は拙者が引き受ける」

真っ直ぐに目を見られたままに、自信満々に言われて言い返す言葉が出なかった。

遠回しに「俺にしか荷物係は出来ない」と言われたようだ。
だが言った張本人はそんな意味にも捉えられる言葉だとは気付かずに、そのまま前に歩きだしてしまう。

意外に自分に懐いている堅物侍が可愛くて、不二子は小さく後ろで笑った。

「じゃあよろしくね、荷物係さん」
「承知した」

ちょっとした召使を持ったようだと一人優越感に浸る不二子であった。


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