やきもき

ルパンが出掛けてすぐ、その女は奴と入れ代わるようにここへ来た。だが奴が居ないと知ると途端に頬を膨らませた。

「ルパンたら、また他の女の所かしらね。折角いい話持ってきたのに」
「お前の他にも良い女が出来たとよ」
「何よそれ、ルパンから聞いたの?」
「奴の最近の様子見りゃすぐ分かる」
「あっそ」

素っ気なく返事をして不二子はぼすっとソファに尻を沈ませた。「はぁー」と重く息を吐き出すとその反対側の俺を見た。

「何よ、あんなサル男」
「あいつも一応名は知れてるからな」
「金があれば男なんて変わらないって思ってんのよ、女なんて」
「…何が言いたい」
「だから…よく女に飽きないわねって話よ」
「あいつのその女癖を利用して近付いてるお前が言っても説得力に欠ける」
「何よー…もういい」

不機嫌そうな声で言って不二子はソファの背凭れの方へ寝返りを打った。いつもならこの程度の嫌味になら更に嫌味を返してくるところだが、何も言わずに不貞腐れてるとこを見ると、かなり苛立ってるみてぇだ。

「行ってほしくねぇなら言えばいいだろ」
「…嫌よ」
「意気地無しっつーのはどういう奴を言うんだっけ?不二子ちゃん」
「そんなにからかって面白いの!?バカ髭!悪趣味!!」
「悪ぃな。趣味と女の好みは悪ぃんだ」

ソファから身体を起こしゆっくりと反対側へ行く。背凭れに向かってる女の後ろ髪に少し触れ、言った言葉の意味を動作で伝えた。

「あら、女の趣味は良いんじゃない?」
「おいおい、機嫌がコロッと変わりやがって」
「世界中には男が嫌な程いるのに、一人の男に構ってられないわ」
「あいつが聞いたら泣くな」
「私を愛さないのがいけないの」
「ハッ。調子がいいな」

くるりとこちらを向いた女が唇を寄せてきた。そっとそれに触れてソファになだれ込むように身体を倒す。

「相棒は気がかりじゃないの?」
「あいつも今頃、他の女とよろしくやってらぁ」
「どうせお尻の軽い女よ」
「違いねぇ」

女が俺の首に腕を回し、再びどちらからともなく、唇を寄せた。やがてそれは深くなり、俺は女の着ていた服を脱がしにかかった。



   ***


「ただいまー」

玄関から陽気な声が聞こえた。ソファで新聞を読みながらそれを聞いて「おう」と短く返事をする。

だがリビングに来た相棒はあんぐりと口を開けて突っ立った。

「どうした?」
「お帰りなさい、ルパン」
「なっ…」
「お前の帰りが遅いのが悪い」
「だからって……何で次元の膝に乗ってんだよ不二子ぉぉぉぉぉ!!!!!」
「あら、私を放って遊び呆けてるのが悪いのよ」
「ちょ、今すぐ降りなさい!次元も腰に手ぇ添えるなぁぁぁ!!」
「いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇ」
「そういう問題じゃなぁぁぁい!!!!」
「悪い奴には仕置きが必要なんだよ」

仕置きとか言っておきながら、しっかりと女の腰を抱き寄せている俺の右手は、最早違う意思を持っていたんだがな。


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