声が枯れるまで、

危険な仕事を一人ではするな。

今まで何度もあの女に言い聞かせた。なのにあの女は、人の言うことも聞かず、一人でノコノコと凶悪と名高いミサカファミリーに潜入した。その色気でボスを手玉に取ったかと思った矢先、相手に裏切られ、ボロボロな姿で俺達の前に現われた。

とは言っても、ルパンと俺は今は別行動中。五ェ門はいつもの調子で修行中。そんでもって女は俺の住むホテルに駆け込んできやがった。誰の好みか知らねぇが、着ていた真っ赤なドレスはズタズタに引き裂かれ、女は傷だらけだった。
息切れしながら壁に縋り付くようにして立つ女を横目に、俺はソファに寝転がりながら静かに言った。

「何で此処が分かった」
「…分かるに決まってるでしょ。あんた達の居場所なんて全員知ってるんだから」
「じゃあルパンの所に行きゃイイだろう。わざわざこんな薄汚れた所に、上品なお前が来るこたぁねぇ」
「つれないわね。女がこんなになってるっていうのに」
「自業自得だろうが」

何べんお前ぇに言ったと思ってんだ。言う度に軽く受け流したりして、忠告聞かないのは何処の誰だ。

「いいわよ。一泊したら早朝に出ていくから」
「……」
「お風呂借りるわね」

少しぐれぇ反省した様子も見せろってんだよ。バカ女。

ダンッ

気付けば知らぬ間に体が動いていて、壁に女を追い込んでいた。女は目を見開き、何があったのか分からないと言ったような顔をしている。

「な、何よ急に…」
「俺がお前に、何度忠告をしたと思う」
「え?」
「一人で危険な仕事はするなと、何度言った?」
「わ、分かるわけないでしょ。そんな事」
「…だからお前はバカなんだよ」
「何ですって!?」
「心配するこっちの身にもなってみやがれってんだよ!!」

柄にもなく、こんな女相手に怒鳴り散らしてしまった。こういうのはルパンの仕事だが、あいつがいない今、俺がこいつを叱るしかない。

だが、今叫んだ言葉はなんだ?まるで、まるで俺がこいつを好きみてぇな言い方じゃねぇか。そう思ったら途端に恥ずかしくなって、俺は女に背を向けて帽子を深々と被る。

「…何よそれ。それじゃまるで…」
「言うな!分かってる。バカな事口走ったのは分かってる!」
「そうじゃなくて!」
「あ?」
「それじゃまるで、あなたに迷惑かけてるみたいじゃない…」

…やっぱり、この女はバカなんじゃないかと本気で考えた。

「…お前が俺たちに迷惑をかけなかった時があるか?」
「かけてないわよ!」
「かけてんだよバカ!ルパンは裏切るわ俺には毎回叱らせるわ五ェ門は色気で惑わすわ!」
「知らないわよそんな事!」
「あーあ、だから女に甘いっていつも言ってんのにルパンの奴…」
「あなたって最終的には私のこと、ルパンに押し付けるわよね」
「仕方ねぇだろ。お前はルパンの女だ」
「あら、私はあの人の恋人でも女にでもなった覚えはないけど?」
「……」

そーかい。そういう態度でくるか、お前って女は。なら、躾けてやろうじゃねーか。

女の後頭部を掴んで無理矢理に唇を押し付ける。俺の胸を叩いて抵抗する女。だが俺は気にせずそのままでいた。

「…んっ…」

コイツでもディープキスくらいで息が上がったりするんだな。
内心そう考えながら俺はゆっくりと離した。

「このくらいで息が上がるなんてな」
「う、るさい!いきなりッだったからよ!これで気は済んだ!?」
「いいや、まだだ」

こんなんで許せると思うなよ。自分で「自分はルパンの女じゃない」と言ったんだからな。少し痛い目に遭ってもらわにゃ、こちらとしてもワリがあわねぇ。

「今回は、俺が裁きを下してやるぜ」

少し嗄れた声でそう言って女をソファに突き飛ばした。


この喉の調子が治るまで、こうしてお前を叱ってやるぜ。


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