横取り

太陽が容赦なく地上を歩く人間、建物、地面を照らし、全てのものの温度を上げる。
夏が一番嫌いだ。蒸し暑い日なんかはまさに。帽子を被る自分は特に蒸し暑くなる。
そんなのを太陽のせいにされても太陽も困る。

少し不機嫌な足取りでアジトへ戻れば、さらに不機嫌な者が居た。

「あら、おかえりなさい」
「いつ来た。どこから入った。何しに来た」
「ついさっき、玄関から普通に入ったわ。用事は特になし」

ちゃりんっと合鍵をテーブルの上へ放り投げ彼女はソファに座ったまま。手元を見ると、白い棒アイスを握っていた。

「食べていいわよ。冷蔵庫に入れておいたから」
「…」

珍しい。この女がタダで何かを買ってきて、俺らに分け渡すとは。
警戒しながら彼女を見るが、彼女は「毒は盛ってないわよ」とおどけて見せた。

「タダのバニラアイスよ。いらないんなら食べなくていいわよ」

言ってぺろりと一舐め。
黙ってそれを見つめる次元は物欲しそうな目をしている。

「食べたいなら持って来なさいな。まだたくさん…」

冷蔵庫のあるキッチンを指差したのと同時に唇は塞がれた。すぐに離れると次元はぺろりと舌なめずりする。

「…甘ぇ。チョコ買えよなせめて」

それだけ言って彼は反対側のソファーに寝そべり、帽子で顔を隠し寝てしまった。

「…犬じゃないんだから」

最近次元の行動が読めない、と悩む不二子だった。


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