猫にまたたび

その日、ルパンは不二子とデートだと浮かれながら髭を剃っていた。洗面台の前に鼻歌を歌いながら立つ相棒の姿に、次元はまたかといつものように呆れるしかなかった。
ここまでは彼らにとっては日常とまったく同じだったのだが、違っていたのは不二子がやって来てからだった。

ピンポーン。
呼び鈴を聞き、立ち上がった次元。ルパンは相変わらず鼻歌を歌いながら今度は歯を磨いている。五エ門は瞑想をしているとなれば、出るのは次元以外に居なかった。
その後も呼び鈴は忙しなく鳴り、ドンドンドンとドアを叩く音まで聞こえてくる。
「うるせぇな」と次元はドアを開けた。

「ルパーン!」

直後、玄関から次元の悲鳴にも似た声が聞こえた。気分よく歌っていたルパンも「なんだよ」と面倒そうに玄関へ行くと、そこに立っていたのは次元ともう一人。

「…不二子…ちゃん?」

頭に猫耳を生やした不二子だった。

「随分可愛い恰好しちゃって〜デートだからって張り切りすぎよ?」
「違うわよ!嵌められたのよジャックに!」
「ジャ、ジャックって誰よ?」

とりあえず落ち着こうとリビングに案内された不二子。すると、五エ門が薄らと目を開く。

「…化け猫か」
「誰が化け猫よ!」

開口一番に失礼極まりないセリフを向けられ、不二子は一人激怒している。
ソファに座らせ話を聞くと、どうやら今回ある宝を共に盗み出した男に騙されてこんな恰好にされてしまったらしい。

「きっとあの時飲んだお酒に薬が混ぜられてたんだわ!絶対許さないんだからあの男!」
「まーでもさ。睡眠薬とかよりよっぽどいいんでないの?可愛いよ、その恰好も」
「そういう問題じゃないの!」

椅子に反対向きで座りながらのん気な事を言うルパンに、不二子が怒る。
すると、不二子の隣に腰掛けていた次元が、彼女に猫の尻尾まで生えていることに気付いた。

「どんだけ猫好きなんだい、その男は」

呆れつつ尻尾を掴んだ。

「ひゃんっ!」

すると、不二子が随分可愛らしい声を上げた。

「ちょっと次元!尻尾触らないでよ!」
「…ふーん、成程ねぇ…」

ニヤッと笑った次元が、すすすっと尻尾の上を指でなぞった。不二子は「アッ、」と身震いしながら小さく唸る。

「い、い加減にしてっ…!」
「尻尾が弱点とは、典型的なパターンだな」
「ふあっ、んっ、やぁっ…じ、次元、ダメっだったら…!」

あまりに色っぽい声に、男三人は思わず固まった。尻尾を触られ感じてしまう不二子の頬は紅く染まっている。
次元はそんな彼女を凝視しながら尻尾を撫でていたが、パッとルパンがそれを止めさせた。

「止めろよ次元!不二子が困ってんでしょーが!」
「る、るぱん…」
「多分こうやって撫でるともっと色っぽい声が…」
「いやんっ!る、るぱんっの、ばかぁ!」

再び嬌声に似た声を上げる不二子を、いやらしい目で見るルパンと次元。
すると、ぺちっとルパンの手を五エ門が斬鉄剣の鞘で叩いた。

「止めぬか、見苦しい」
「あら。五エ門は猫嫌いなのかい?」
「いや、大好きだ」

呟くと、五エ門はなぜか懐からまたたびを出した。

「酔わせた方がもっと愛らしくなるかと」
「成程!」
「〜〜このっスケベ!」

結局その後不二子に薬を盛った男は懲らしめられたが、不二子は一週間猫耳がついたままの生活を送ったのであった。


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