僕と、僕と、もう一つの僕

「貴方、本物のルパン?」

約束の宝石を持って、意気揚々と彼女の部屋へやって来たら、この一言。
不二子は入ってきたルパンに対し、拳銃を向けている。

「あのーどったの不二子?」
「動かないで。その宝石は本物なの?」
「そんな物騒なもん仕舞いなって」
「いいから答えて!」

彼女に怒鳴られ、ルパンは素直に両手を上に挙げた。「俺はルパン。宝石も本物だよ」と答えると、不二子は肩の力を少しだけ抜いた。

「…お昼頃に貴方がここへやってきたの」
「へ?」
「銃を乱射して出て行ったわ」

お前のような女に、宝石は渡しはしない。それだけを言い残して。
ルパンには勿論ここへ来た覚えはない。昼頃といえば、ちょうどこの宝石を盗み出している時なのだから。

「そんで俺を疑ったってわけね」
「貴方は変装もお芝居も上手なんですもの」
「冗談じゃないって。俺が俺に化けてもしゃーないでしょ?」

おどけて見せるルパンに、不二子はようやく笑みを見せた。
彼女が銃をテーブルの上に置いたのを見計らい、ルパンも手を下げ彼女に歩み寄った。

「そこまでだ、偽物」

だが、再びルパンの声がした。不二子は驚き目を見開いた。
もう一人のルパンが、ドアの前に立っていたからだ。

「ルパン!?」
「お前か、偽物の俺っていうのは」
「なんだと!?偽物はおめーの方だろうが!」

そう言うと、彼は懐から先ほどルパンが見せた宝石とまるっきり同じものを取り出してみせた。

「こっちが本物だ」
「嘘つけ!俺だって本物を持ってんだぞ!?」
「不二子、お前にならわかるだろ。俺が本物だってな」
「いんや、俺が本物だね。なあ、不二子?」

二人のルパンに迫られるが、不二子は何も答えられなかった。
すると彼女の隣にいるルパンが、「どうしたの?」と驚きを隠さぬ彼女の顔を覗き込んだ。

「さあ、言ってごらん。本物のルパンはどちらなのか」

ヒュッ、とルパンが宝石を宙に投げた。すると、ドアの前に立っていたルパンもその宝石目掛けて宝石を投げた。「あっ」と不二子が宝石に目を奪われたその時。
一筋の閃きが彼女を包んだ。

天井裏に潜んでいた五エ門は、静かに刀身を鞘に納める。
直後、不二子の顔が真っ二つに裂かれ、その下から見知らぬ女の顔が出てきた。

「不二子に化けて俺を騙そうなんざ、百年早いよ。御嬢さん」

バァン、とルパンの言葉と共に銃声が響いた。
女のすぐ横の壁に小さな穴が一つ開いた。ドアの前に立つルパンの隣で、次元のコンバット・マグナムが硝煙を漂わせている。
女はすぐさま立ち上がり、そのまま部屋を出て行った。

「不二子なら、本物のルパンくらい見抜けなくちゃね!」

ヘラリと笑った二人目のルパンがそのマスクを外す。その下から現れたのは、先ほど五エ門が斬った峰不二子の顔だった。

「さっすが不二子!お見事なお芝居だったよー」
「当然よ。ルパンの事を知り尽くしてるんだから」
「ぐふふ、何と嬉しいお言葉〜」

早速鼻の下を伸ばすルパンに、次元が尋ねた。

「しかし、どっちが本物の宝石なんだ?」

宙に放られた二つの宝石は、とうに床に落ちていた。それを両方拾い上げると、ルパンは「にしし」と三人に向き直る。

「実はね、どっちも本物なのよ」
「え?」
「何言ってやがる。”夕陽の鬼灯”はこの世に一つだけだろ」
「それが違うんだなぁ。”夕陽の鬼灯”は双子の宝石なのよ」

ルパンの説明に、ますます訳がわからず首を傾げる三人。

「宝石に双子なんてあるの?」
「同じ石の中から出てきた同じ色の宝石はみーんな双子ちゃんでしょうが」
「それを言ったら、同じ地球の石から出てきた宝石ぜーんぶ兄弟じゃねぇか」
「…あ、なるほど」
「下らん」

呆れる五エ門の一言に、他の二人も呆れるしかなかった。

「ま、哲学的なお話はやめようぜ。無事二つとも手に入ったんだからいいじゃないのよ」

ルパンの言葉に、三人も「それもそうだな」と頷いた。



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