ルパン達が○○だったらシリーズ 『学校教師編』 トントン。 保健室のドアをノックする音が聞こえた。 「どうぞ」 「不二子せんせーっ!…ふが!」 勢いよく開いたドアの向こうから飛んできたのは、国語教師のルパンだった。飛びついた先にいるのは、保険医の峰不二子だ。 しかし彼の勢いのある動きを、不二子はヒール一つで防いでみせた。 「く、黒のパンツ…」 「もう!」 「ぐえっ!」 保健室の床に倒れてもなお、彼女のスカートの中を覗くルパンの鳩尾を思い切りヒールで踏んづける。 毎日ラブコールを送るルパンだが、彼はとにかく諦めが悪かった。 つい数か月前にこの学校へ赴任してきた不二子に一目惚れしてから、彼は毎日保健室にやってくるのだ。 「で、今日は何の御用かしら?」 「相変わらず冷たいなー不二子先生ってば。いい加減俺とデートしてくれてもいいんじゃない?」 「まともにデートに誘えない人に言われてもねぇ」 「真面目に誘ったってしてくれないくせに」 「下心が見え見えなんだもの」 「うっ」 図星をつかれたルパン。 すると、「ゴホンッ」とそれらしく咳払いをすると、突然ある一句を詠んだ。 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする 聞いたことのある句に、不二子が首を傾げた。 「どういう意味なの?」 「『絶えるならいっそこの命よ、絶えてしまえ。このまま生きていると、この恋を忍ぶ気持ちが弱って、皆に知られてしまいそうだから…』ていう意味!」 「いつ貴方が忍んだのかが知りたいわ」 「俺はいつだって不二子先生の事を恋焦がれて一億光年…」 「それは光の距離でしょ」 得意げな顔をして肩を抱くその手を振り払う。 すると、ガラッと再びドアが開いた。 「あら、次元先生。こんな時間にどうしたの?」 やってきたのは化学物理教師の次元大介だ。少し眠そうな顔をしているのはいつものことだが、そんな彼はまたベッドに向かっていく。 「この頃寝不足でな。ちょっくらベッド借りるぜ」 「いつも寝不足なのね。ここは仮眠室じゃないのよ?」 「そう怒るなって。可愛い不二子せんせー」 ベッドに寝そべりくあーと欠伸を一つする。 溜息をつく不二子。そんな彼女をルパンが後ろから抱きしめようとするも、いつも通り躱されてしまう。 「失礼する」 ベシャッとルパンが床に倒れるのと同時に、またも来訪者があった。 「あら、石川先生」 「おーもんごえ先生!どったのよ」 歴史担当の石川五右ェ門だ。彼は一冊の本を手にしていた。 「いや、先日峰先生に貸すと言ってあった本を届けに参ったのだ。これが、例の本でござる」 「なになに…徳川家全十五代完全網羅ガイドブック?不二子先生ってばこんなのに興味があんの?」 「あら、意外と読んでみると面白いのよ?ありがとう石川先生」 「いや、礼には及ばぬ」 少し頬を染めている五右ェ門を、ルパンがジト目で睨む。 そこで、不二子が「そういえば、」と三人に言った。 「お三方、次の授業は?」 「拙者は次の時間は空いている」 「ふあ〜…俺も」 「俺はこれから二年生に源氏物語の授業!」 「なら早く行った方がいいわ。もう授業が始まっちゃうから」 「それなら今から源氏物語の光源氏よろしく、俺のすんばらしいテクニックを披露…」 「しなくていいから早く授業に行きなさい!」 げしっと不二子に一蹴され、ルパンは保健室を追い出されてしまう。 「保険医ってのも大変だなぁ」 「この学校には問題児がたくさん居るからね…はぁ」 廊下からは、銭形教頭の怒鳴り声が聞こえてきた。 |