その頃の彼ら殺生丸は襖の向こうでウロウロする臭いに気付き、顔を上げる。 「三つ子か、入れ。」 許可を出すと、すすす、と襖が控えめに開く、三つの仔犬の首が縦に並んでこちらを見ていた。 「どうした。」 殺生丸にしては割りとやさしめに声をかけると、三つ子がやっとチョロチョロと入ってくる。 「殺生丸さまー。」 「殺生丸さまー。」 「あのねー・・・」 「なんだ。」 先を促すと、仔犬たちはモジモジと手を擦り合わせた。 「あのニンゲンさまはつぎいつくるのー?」 「人間・・・蓮子のことか?」 「蓮子さまー。」 「いいニオいー。」 「すきー。」 ここに蓮子がいたら、「あたしも大っ好きだよ!可愛いな。こんちくしょーめ!」くらい言っていたかもしれない。想像して、殺生丸は、ふっと笑った。 殺生丸が笑ったことで、三つ子から緊張の固さが和らぐ。流石に無邪気なこの仔犬たちを、引き裂くほど殺生丸は非情ではなかったが、殺生丸ほどの妖力ともなれば、少なからず相手に威圧感を与えるのだ。 「あれが気に入ったのか?」 珍しい笑みを浮かべたまま、殺生丸が優しく問う。 その優しい笑みに、仔犬たちはまた嬉しくなってホワホワと喋りだす。 「あのねー蓮子さまぎゅっとしてくれたのー。」 「あったかいのー。」 「やーらかいのー。」 「そうか。」 同じようにしてやることはないが、殺生丸は三つ子の頭をそれぞれ右からポンポンポンと軽く叩いてやる。優しく触れた殺生丸に、三つ子がまた、きゃーと嬉しそうに笑う。 「蓮子さまがいるときの殺生丸さまもすきー。」 「あったかいのー。」 「やーらかいのー。」 「・・・・・・」 それはさわり心地とかではなく、雰囲気のことだろう。 舐められたり、威厳を損ねることは嫌いだが、三つ子のその反応は、正直、不愉快ではなかった。 「近いうちにまた会わせてやろう。」 「わーい。」 「わーい。」 「うれしー。」 彼女の都合などお構いなしにそう言う。無理矢理連れ去れば文句を言いながら怒る彼女を想像して、ひそりと笑う。 でも、きっと三つ子に会えば嬉しそうに笑うのだろうところまで想像して、あまり嫌がらせにはならないな。と思いなおす。 三つ子ちゃん、気に入ってるので出しちゃいました。殺生丸は小さいものには寛容な気がします。小さいもの好きだと可愛い。昔のコラボアニメーションで、かごめと犬夜叉の間にいた女らんまがかなり小さかったので、夢主も小さめの設定です。 三つ子ちゃんはたまに出したいと思います。彼らがいるのは、犬一族所有のお屋敷という設定です。殺生丸には巣が無いとの先生のお言葉ですが、御母堂のお屋敷がかなり立派だったので、別荘的な建物のひとつかふたつかはあるだろうとの妄想です。 (20/10/31) 前へ* 目次 #次へ ∴栞∴拍手 |