胡蝶の夢 | ナノ




真昼の月





「運命なんて嫌いよ」


 その言葉そのものが嫌いだと彼女は言った。


「生も死も、己のものよ。野にいる獣とどこが違うの?」


 食物連鎖の果てが霊長類だなんてヒトの傲りだろう。そしてそこに終わりはない。


「理不尽な死も、不利な立ち位置も、自然にだって存在するわ。産まれながらに全てが平等だなんて幻想ファンタジーだわ」


 人は何かに責任転嫁せずにはいられない生き物だ。しかし、己が不幸だと思うことこそ夢物語だ。


「例えばそこに他者の介入や強制力が働いたとしても、自分が『どう在りたいか』と思うことは、願うことも選ぶことも自由だったはずだわ」


 彼女の言葉は眩しい。珠に眩しすぎて見えなくなるほどに。







(苦しくても痛くても、目を開けようとするのは、そこに憧れがあるからなんだ)





掲載日(13/09/07)








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