短編 | ナノ


君がいいと言ったから



「なまえ。」

「なあにー?」

「祝言をあげるぞ。」

 びっくりしすぎて手に持っていたものを落としてしまった。思わず、まじまじと殺生丸を見る。

「ほんとにいいの?」

「それはどういう意味だ?」

 殺生丸が、訝しげに小首を傾げる。だって、となまえは続けるが、殺生丸が「愚問だな。」とそれを遮る。

「私のつまはおまえ以外考えられぬと言っている。」

 なまえは楽観的ではあるが、自分が人間であることをそれほど軽視はしていない。

 人間だろうが妖怪だろうが恋愛は自由だと思う。しかし、結婚となると話は別だ。結婚とは本来家同士を結びつけるものだからだ。側にいるだけならば、現状の恋人で十分だ。何より、人間の自分は彼より先に逝く。それはどうしようもない自然の摂理で、妖怪の彼からすると、それはあっという間のことだろう。

 しかし、殺生丸にはっきりと言い切られ、言葉を呑み込んだ。彼にそこまで言わせて、ぐだぐだと言い訳染みたことを言うのは不粋だと感じた。

「ほかに聞くことがあるのか?」

 まるでそれ以外に大切なことはないのだと言うように。否、我が道をいく殺生丸は本当にそれだけなのだろう。たったそれだけで、全てを覚悟しているのだ。

「うーん、ない。かな。」

 結婚とは家同士が絡むもの。しかし、結婚するのは当人だ。

 殺生丸がいいならいっかなぁ。となまえは考えた。

 結局彼女は呑気だった。


 君がいい。と、君が言ったから。

 ――――今日は二人の結婚記念日。







三年前の今日。この二人を夫婦として初めてサイトに載せました。なので個人的には今日が結婚記念日です。後先考えずに設定した二人ですが管理人の中ではまだまだ熱をもって存在してる二人です。
一応連載とは分けて考えてるので、このプロポーズはここだけの設定です。
夢主は拘りはなく、相手は妖怪だし恋人のままでもいいと思うタイプなんですが、結婚したほうが虫除けになるよって弥勒あたりに入れ知恵された殺生丸がならするかってなったんだと思います。殺生丸たち妖怪は結婚という概念はない設定なんですが、知識としては知ってるので、絶対しない!というものでもなく、妻という肩書きで拘束できるならするかって感じです。
(23/06/11)仮タイトル『求婚』

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