父と兄と弟
父親の腕の中の存在を嗅ぎ分け、殺生丸は目を眇めた。
「・・・父上、なんですか
「『それ』という言い方はないだろう殺生丸よ。そなたの弟だ。もうすぐお前はお兄さんになるんだぞと前々からいっておったであろう」
「お兄さん」という単語の不愉快さに、殺生丸は眉をしかめた。
父の腕に大人しく抱かれている幼子は確かに、父や自分と似た犬の匂いがする。しかし、それに混じる別の匂いに殺生丸はさらに怪訝な顔をする。
「半妖・・・」
「この子の母は人間だからな。いい女なんだぞ〜」
砂を吐きそうな、しかも父親のノロケなんぞに苛々し、最後にトドメと言わんばかりに付け加えられた、やらんからな。と、いう余計な一言にさらに苛っとした。
父に抱かれている、曰く弟とやらを見る。自分たちと同じ白銀の髪に琥珀の瞳をしているが、目が合うなり、ビクリと肩を震わせ、父の肩に顔を押し付けしがみついた。危機管理能力はあるようだ。と殺生丸は警戒されてむしろ感心した。
「これ、殺生丸。幼子を睨む奴があるか。もっと穏やかな顔をしろ」
「元よりこの顔ですので」
「お前はずっと一人っ子で甘やかしてきたからな。これを機に弱者への慈悲の心を養え」
「・・・・・・・・・」
なんて無理難題をいうのだと憤慨した。
実の弟ならまだいざ知らず。腹違いの弟、しかも大嫌いな人間の血を引いた半妖を可愛がれというのは殺生丸にとっては拷問に近かった。
父上は完全にオリジナルですね。これは天下覇道の剣を見た頃に書いたのかな?昔過ぎて覚えてないや←
アニメと原作は別物と思っているので、名前とヴィジュアル以外はあんまり参考にしていないです。
管理人の予想ではるーみっく界の父親はちゃらんぽらん率が高いので、犬夜叉のお父さんも大概だったのかなぁと思ってます。
ただ、犬夜叉があの大きさになるまで五体満足で生きてたということなので、殺生丸は幼い頃の犬夜叉はわりと苛めてなかったのかな、と、苛めても手加減してたのかな、と夢を見てます。
(20/05/24)
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