白烏の錬金術師 | ナノ

6






其は苦難に歓喜を

戦いに勝利を

暗黒に光を

死者に生を約束する



血の如き紅き石───









†たいようにいどむもの・2†









「教主。面会を求める者が来ております。子供二人と鎧を着た、三人組でエルリック兄弟と名乗ってますが・・・」
「なんだそれは。私は忙しい。帰ってもらえ」

 太陽神の御子としては相応しくない投げやりな物言いで男をあしらう教主が、ふと聞き覚えのある名前に言葉を止める。

「! いや、待て。エルリック兄弟だと?エドワード・エルリックか!?」
「はぁ、たしか子供の方の一人がそう名乗ってましたな・・・お知り合いで?」
「〜〜〜〜〜ッ。まずい事になった!」

 男の平和な発言に教主は頭が痛むのか眉間を押さえる。

「“鋼の錬金術師”エドワード・エルリックだ!」
「!!」

 教主の出した二つ名にようやく妙な三人組の正体に気付き、男が信じられないと声を荒げる。

「なっ・・・。こんなちっこいガキでしたよ!?冗談でしょう!?」

 混乱のあまり、本人がいれば間違いなく私刑執行されそうな台詞をはきながら、自分の手のひらで件の人物のサイズを表す。

「バカ者!錬金術は年齢がどうこういうものではない!」

 やはり頭痛がするのか額を自分の指で揉みしだきながら教主が男の甘さを一括する。
 錬金術を少しは齧った事がある者ならではの発言だ。

「国家錬金術師の称号を得たのが十二歳のときだと聞いてはいたが・・・。そうか・・・本当に噂通り子供だったか・・・」
「その国家錬金術師がなぜここに!?まさか我々の計画が・・・」
「軍の狗めはよほど鼻が良いとみえる」

 組んだ手を顎に置きながら、教主が心から忌々しそうに呟く。

「追い返しますか?」
「いや、それではかえってあやしまれよう。追い返したところでまた来るだろうしな」

 教主が額に汗を浮かべながら口の端を持ち上げる。

「・・・奴らはここには来なかった───というのはどうか?」

 それを見た男が教主の言わんとするとこに気付く。

「!」

 そして男も教主と同じくにやりと口の端を弧に描いた。

「神の御心のままに・・・」

 それは決して、聖職者の笑みではなかった───。

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