土井先生


くノ一教室で友達と好みの男性について語り合った時、私はワイルドな人が好みかな、と言った。

その翌日、土井先生がヒゲを生やしたまま出勤してきた。
爽やかな先生のイメージが台無しだ。





後輩の乱太郎は素直で可愛い。
乱太郎って眼鏡が似合うよね、頭良さそうに見えるし素敵だよ、と褒めた。乱太郎は、ありがとうございます、と照れて笑った。

翌日、土井先生が眼鏡を掛けて出勤してきた。
先生、目が悪かったっけ?





「なんかさぁ」
「はい?」
「土井先生、最近ちょっとおかしいよね…」
「ブッ」
きり丸に相談したら盛大に噴き出された。なんだなんだ?
「先輩、マジで言ってんすか!?」
「え?なんで?」
「いやもうなんつーか…!先生、可哀相すぎる!うわはははは!!!」
意味がよく分からない。
なんで可哀相? つか、可哀相なのに笑うの?
「だっておかしいじゃん。行動、怪しすぎない? なんかあったのかな」
「…たぶん、そう思ってんの学園中で先輩だけっす」
「…はぁ?」
えっ?どうして?
「教えませーん」
「ケチっ!」
「俺には褒め言葉っすけど」
「あ、そうだった」
きり丸は笑って壁を眺める。壁の向こうに何かいるの?
「土井先生、明日はどう出てくっかな〜」





翌日、土井先生の授業を受けていた時のこと。
「どこか解らないところあるか?」
「え?特に何もな」
「そうかそうか!ここか!ここが解んないのか!」
先生は無理矢理、私の授業メモに書き込んできた。なっ、何をなさる!
「?」
先生が机から離れたあと、書かれた文を覗き込んだら


『好きです』


たったの、四文字。

先生はもう黒板に向かっていてその表情は分からなかったけれど、耳まで真っ赤になっていた。

どうしよう。
私の一方的な片思いだと思っていた。相手にされないと思っていた。
…ああそうか。
今までの先生の行動はそういうことだったのか。

授業が終わったら、先生にまずなんて言おうかな。
ごめん先生。授業の内容、全然頭に入んないや。


- 6 -

prev | next


back

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -