伊作


伊作は私のオアシスだ。
授業でちょっと失敗した時、委員会で忙しい時、いつも私の愚痴を聞いてくれる。

私は伊作が大好きだ。
思い上がりかもしれないけど、伊作も私を好きだと思う。
だって、好きでもなかったらそんな愚痴を長々聞いてはくれないと思うし、何より伊作は
「おはよー」
「あっ、おはよー。伊作」
私と話す時、嬉しそうにへにゃりと笑うのだ。今、こんな風に。
私以外の誰かの前で、伊作がこんな顔をしているのを、私は見たことが無かった。
「どしたの」
「うん、あのさ…明日から長期の忍務に出ることになったんだけど…その前に言わなきゃと思ってさ…」
「うん」
「あの、ね…」
突然だ。
伊作は真っ赤な顔して俯いて、急にどもり出した。なんだかこっちまで緊張してきた。
「あの…」
「…うん」
顔に熱が集中する。
心臓がドキドキうるさい。
「…僕、…」
「うん」
「僕は…」
「うん」
「…」
「…」
ええいもう!じれったいな!
「ええいもう!じれったいな!あとちょっとなんだから頑張れ!勇気出して言っちゃえ!」
「…え?」
「・・・え?」
…私、今なんて言った? ひょっとして口からもれた? んな阿呆な!
「…ぷっ」
伊作は腹を抱えてケラケラ笑い出した。さっきまでの緊張はなんだったんだ。
「緊張して損したよ〜!」
そこまで笑わなくたっていいじゃないか。私ってば今、相当に恥ずかしい女だ。
「笑い過ぎだぞ!」
「だって、もう言う前から伝わってたんだなぁと思ったら、気が抜けちゃって…!」
今、他の人に見られたら、私はたぶん彼よりも顔が赤い。

「伊作、あのさ…」
「好きだよ」

一拍おいて、
彼はまた、へにゃりと破顔した。

ああ
この笑顔、私だけのものだ。


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