篝火花の試練-雑渡昆奈門
雑渡昆奈門の雑渡視点
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『その甘さ、どうにかしないといつか命取りになるよ』
「…滑稽だな」
帰路を走りながら自身の言動をぼんやりと振り返る。
あの言葉は果たして誰に向けたものだったか。あの若者か?それとも私自身か? 自分で自分を笑うしかない。
『忍者としてその甘さは致命的だ』
…本当に、あそこまで露骨に指摘するつもりは無かった。当初はほんの軽口で済ませるつもりだった。だって伊作くんと伏木蔵以外の忍たまにさして興味など無いから。
ただ気が付いたら口が滑っていた。何故だろう、あれほど感情的に物を喋ったことなど久しぶりだ。
"曲者が言ってることは事実だから"
――似ていた…のかもしれない。
あの若者が、昔の私に。
考えるよりも先に身体が動いてしまう、忍としてあるまじき言動が。
「・・・」
再び自分の腕へと視線を落とす。消えることの無い火傷の痕。
かもしれない、ではなく似ていたのだろう。彼は私の忠告に対して何一つ言い訳をしなかった。本心では自分の言動に荷を感じている証拠だ。プロの忍とは本来どうあるべきか全て承知している上で、それが出来ずに思い悩んでいる。
私の発言に対して歪めたあの表情が、まるで昔の自分を見ているようだった。だからこそ、気付いた時には私も言葉が厳しくなっていた。
ああ、やはり滑稽だ。あの言葉は私が昔の自身へ浴びせたものであり、それ以外の何ものでもない。彼には申し訳ないことをした。
「命取り、か」
私が言えた義理じゃない。もしここに尊奈門や陣左が居たなら私へ二言三言は抗議しているかもしれないな。あいつらが居なくて良かった。
あーあ、なんだか損した気分だ。息抜きに保健委員会のところへ遊びに行ったのに。伏木蔵と一緒に団子の一本でも食べておくんだった。
「土産でも買って行くか…」
半分は自分用に。
日頃あいつらに土産を買って行くことなどないから、きっと大そう驚くだろう。だがそれもいい。今日は何となく感傷に浸りたい。
昔、あいつらは私にとって荷になっていた。けれど同時に、今の私があるのもアイツらのふるまいによるものなのだ。たまには素直にあいつらの喜ぶ顔を拝んでもいい気がする。
今の私だからこそ思う。
すべてを背負うのは容易なことではない。それ相応の覚悟と技量が必要だ。
忍道を歩みつつ何もかもを守りたいと考えるのは、神になりたいと考えるに等しいのだから。
あの若者は【今】を乗り越えられるのだろうか。
…まあ、つまるところ私にはどうでもいい話だけれど。
アフター組頭です。
彼のミステリアス感を表現しようと必死に言葉をへずったら過去最高に短文になっちゃいましたすみません。そしてモロつどいネタですみません。もう何もかもすみません…
文が貧相過ぎるのでたっぷり補足しますと、←
組頭は七松を揶揄したつもりなどなく、本当にただの親切で忠告してました。忍道においての酸いも甘いも知ってる大人な組頭は、七松が忍者としての冷徹さを身に付けられず思い悩んでることに一目で気付いたっていう…
そんな話が書きたかったはずなのにぃぃェ
タソガレスキーなので大変オイシかったです!
リクありがとうございました☆
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