too sweet


まだ湯気の昇っているカップを給仕から受け取りドアを閉めると、彼は未だ眠ったままで、規則正しい寝息がたっぷりとしたシーツに吸い込まれていく。
中身を零さぬように気をつけながらそっと歩み寄ると、思いの外長い睫毛が僅かに揺れる。
起こしてしまっただろうかと、寝台に腰を下ろして煩げに貌に垂れ落ちる髪を除けてやれば、再び瞼が幾度か動き、甘い水色の目が薄く開いた。
「お早う御座います。まだ寝ていらしても宜しいのですよ」
からかうように囁いて、白い額に口付けを落とすと、痩せた体が小さく身じろぐ。
何処か甘えるような、拗ねているような、どちらともつかない表情で彼は私を見上げ、悪戯にシーツを手繰り寄せた。
「それとも、何か温かいものをご所望ですか?」
笑いながら熱いカップを差し出せば、彼はまだ眠いのだろうか、酷く緩慢な動作で躰を起こし、シーツが滑り落ちて華奢な肩が露わになった。
「・・・・・・今、起きたのか?」
今は殆ど湯気も見えなくなったカップに手を伸ばして、彼は掠れた声で問うた。
「いいえ、貴方が寝ている時から」
その子供のような飲み方が可愛らしくて、揺れる髪に指を触れると、微かな鼓動さえ伝わる気がする。
けれども彼はそれには何も云わず、僅かに顔を顰めて呟いた。
「・・・・・・甘い」
「それはそうですよ。ショコラですから」
可笑しくなって笑声を立てると、彼は少し不機嫌になって、カップの淵に口をつけたまま、私の方を見上げてみせた。
「甘過ぎるとは思わないのか」
「甘いものがお好きなこと位、私はちゃんと知っていますよ」
やはり憮然とした声に、幼子をいなすように囁きかける。
淡く透ける肌が赤みを帯びて、薄青い瞳が色を増した。
「・・・・・・俺は卿が作った方が良い」
ゆっくりと白んでいく部屋の中に浮かべるようなその声に、思わず小さな笑みが洩れてしまう。
「それは、私のことを愛して下さっている、と解釈して宜しいですね」
ゆるりと彼の肩を引き寄せて耳元に口付け、半ば強引に云い添える。
大人しく己のそれに凭れた肩は、予想外に軽く、薄かった。
「己惚れるな、青二才」
まるで強がっているように高慢なその声に、私は微笑み、また口付ける。
「貴方が私を好きなこと、私が知らぬとお思いで?」





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