HITお礼 | ナノ
金華さんリク

 暖かいひなたで1匹のワンちゃんが眠っていた。
 青い毛で毛並みはなだらか、サラサラ。そうっと触ると隆起する背の筋肉はしなやかで犬というよりも猫だ。
 そんな、犬でもあり猫でもあるいきものが、衛宮家の縁側ですぅすぅ眠っていた。

「……」

 湧くイタズラ心に口元が緩む。素早く周囲に視線を走らせる。
 ──オールクリア!衛宮家に人影なし!ここにいるのは私とランサーのみ。
 ゆっくりゆっくりランサーの青い尻尾に手を伸ばす。木目を覆い隠すように散らばった毛先をそっとすくい上げて……そのサラサラ具合に感動する。トリートメントもせず濡れたまま眠るくせにこの完璧な髪の毛は何!?英霊だから?神の子だから?
 ランサーと同じようにサラサラの神を持つセイバーやアサシンやライダーたちの姿を思い浮かべて悔しくなりながら、手に持った青を3つの毛束に分ける。それを順番通りに重ね合わせ編み込こんでいく。

「っ、ふふ」

 堪え切れなかった笑みが暖まった縁側に落ちた。出来上がったのは青い三つ編み。うん、かわいくなった!
 満足していると自分の意思とは無関係に大きく開く口。「ふぁああ、」穏やかな寝息を立てて眠るランサーを見ていたら私も眠くなってきちゃった。ごろん、と青いワンちゃんと向かい合うようにして寝転がる。

「よく眠ってる……」

 半年前までは敵だった陣営の家なんだけどなぁ、ここ。そこでこんなにも無防備に眠るなんて、大英雄は分からない。
 「おお……!」ムニムニと突いてみたほっぺたは意外に柔らかくて感嘆の声が漏れる。ふにふに、ふにふに、夢中でランサーのほっぺたを弄る。
 ……綺麗な顔だ。ギルガメッシュの方が目立ちがちだけどランサーだって美しい顔をしてる。キリリとした眉につり上がった目尻、すっと通った鼻筋、意外に小さい唇。
 まつげも青色なんだ──そう思った瞬間、見つめていたランサーの瞳が開いた。

「うわぁあ!?」
「よぉ」

 驚いて引いた身をグイッと引き寄せられ、距離がさらに縮まる。でもそんなこと今は気にしてられなかった。

「お、起きてたの!?い、いつ、から、っ」
「なまえがここに来たときからだな」

 最初からかー!

「で、ほら?」
「え、なに」
「キスしてくれるんだろ?」
「なんでそういう話になってるの!」

 身をよじるものの拘束は外れない。腰に回るランサーの腕の力はどんどん強くなる。これはキスしないと解放してくれないなあ。

「もう……目を瞑って」
「おう」

 ランサーが目を瞑ったのをしっかり確認してゆっくりと顔を近づけた。
 ちゅ、とお互いの唇を重ね合わせる。離れて、それでもいつもより近くで見つめたランサーは随分と嬉しそうな顔をしていた。

「よし、じゃあもう少し寝ようぜ」
「まだ眠るの?サーヴァントは睡眠を必要としないんじゃなかったっけ」
「いいだろ、寝るのは気持ちいいぜ」

 穏やかに目を細めるランサーに頷く。「しょうがない。士郎が帰ってくるまでね」
 戦士がこうやって身を休める日々もいいかもしれない。


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