Don't leave my hand.


 振袖を着終えるとちょうど時計の針が12を過ぎていた。リビングを覗けば綺礼がワインを飲みながらテレビを見ていて、いつも忙しい神父様がこういう日はゆっくりできることに口元が緩む。

「あけましておめでとう、綺礼」
「ああ、おめでとう。ランサーと初詣に行くのだったか」
「うん。綺礼も行く?」
「異教の神に祈れと?」
「あ、そっか」

 じゃあ綺礼の分まで私が祈ってくるね!そういう問題ではないのだが。そんな会話をしているとふいに背中に衝撃。体にのしかかってくる68キロくらいの重さに唸る。

「ギル〜重い〜」
「名前ー!我と新年最初の勝負をするぞー!」
「今からランサーと初詣行ってくるからちょっと待ってて」

 格ゲーでギルガメッシュを倒してしまった日から続く私と英雄王の勝負は新年も終わらないらしい。初詣から帰ってくるまで少し待ってて、と言ったのにひっつき虫は離れてくれない。しかもさらに力強くなってないこれ……!?

「王を待たせるとは!不敬であるぞ!」
「え、ええ……」
「こら、ギルガメッシュ。新年早々困らせてやるな」
「き、綺礼……!」

 綺礼の珍しい援護射撃に感動する。いつもはギルと連んで私やランサーをいじりニヤニヤしているというのに!

「嫌だ!雑種は我のものだ!」
「ちょ、ギル、暴れないで!着物乱れちゃうでしょ!」
「良い。どうせ勝負が終わった後脱ぐのだ、手間が省ける」
「ぬ、脱ぐって!?」
「何を言っておる。年初めにやることなどヒメハジメしかないだろう」

 聖杯くんはサーヴァントにいらぬ知識ばっかり与え過ぎじゃないですかねー!?
 「どけ、ギルガメッシュ」年が明けても相変わらずのギルに深いため息をつこうとしたととき、新しい声と共に背中の荷物がふっと消えた。
 振り返ればAUOの首根っこを掴んで持ち上げているランサーがいた。

「犬ごときが王に何をする!」
「うるせえうるせえ。名前はオレと出かけんだよ」

 ひょい、と綺礼にギルを押し付けたランサーは私の手を引っ張り、玄関に向かう。後ろからギルの声が聞こえるけれどランサーは相手にしない。あとでこわーいことが待ってそうなのに、新年のランサーは強いのかな?

「ランサーはお願い事何にするの?」

 教会を出て長い下り坂を降りる。真冬の深夜はひどく寒かったけれど繋いだ手が暖かいから、平気だった。

「願い事ォ?……そうさな、名前がキスしてくれますよーに、とか」

 ウインクをして自分の唇を指差すランサーはどう見てもおどけていて。もう、と小さく笑う。

「その願い事、わざわざ神様にお願いしなくても私が叶えてあげられるけど?」
「お、本当か?じゃあ叶えてくれ」

 しゃがむランサーに顔を近づけ、ちゅ、と軽い口づけをする。はぁ、と吐いたお互いの白い息が混じり合うのが嬉しくて、思わず目を細めた。

「オレはディープなのが欲しかったんだが?」
「それは帰ってからのお楽しみ!」
「期待しとくぜ」
「期待しといて!」

 笑って、繋いだ手に力を入れた。

(かみさま、今年もランサーの隣にいさせてください)
(綺礼とギルと、一緒にいるのを許してください)

(あけましておめでとう!)

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