儚き夢
心地好い声
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 ねえ、覚えてる?

 あの日の出来事を



心地好い声



 雨の中、青年は歩いていた。
 昔、それも幼い時だ。『人は己の為に力を行使する人が多くを占める』と誰かが言っていた。それを言ったのは歳が自分と変わらない少さな女の子だ。騎士団に居た頃、同じ小隊の奴も言ってた。


「誰だったかな」


 青年はふっと笑った。
 今更、思い出すなんてな。だけど、間違っていなかった。貴族や騎士団、評議会の連中を見ていたらこれを言った女が正しいと思った。
 彼女は自分の“ 正義 ”があった。
 彼女は自分の“ 正義 ”に忠実だった。
 彼女は自分の“ 正義 ”を通していた。


「ん?」


 雨が降る中、下宿先の部屋に続く階段手前に女性が横たわっていた。女は紫色の混じった黒色の髪をしていた。


「行き倒れか……?」


 無視は……出来ないよな。
 青年は女が生きているとわかると、自宅にしてある宿屋の一室に連れ帰り、介抱することにした。





 ――ここはどこだろう。女は目を醒ました。


「お、目ぇ醒めたか?」


 青年は女を見た。


「片目ずつ……瞳の色が違うんだな。あいつみたいに」

「……」

「寝るか?」


 女は答える事無く、再び目を閉じた。


「そっか」


 ユーリは女にちゃんと布団を被せ、椅子に座った。


「おやすみ」


 そんな声が聞こえた気がした。その声は心地良かった。



 私はあの時誓った

 あいつとして生きることを
bkm
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