序章 行楽地で孤独な子供






『………ねえおかあさん、なまえあれにのりた……』

「どうしても行きたいって行ったから連れてきてあげたのに、まだワガママ言うの?」

「もう赤ん坊じゃないんだ、いい加減にしろ」

『……ごめんなさい』



近くに出来た小さな遊園地。
私はただ一言、行ってみたいと言った。
その後、両親が最も愛する妹が、自分も行きたいと言った。


ただ、それだけのことだった。





私は、ついで。
なら、来なくてもよかったんじゃないか。
来ない方が、よかったんじゃないか。


両親につけられた痣や傷の痕。
それを労わるようにさすりながら、小さく思った。


目頭が熱くなってきて、泣いてしまいそうになった所に、君は現れた。



「どうしたの?」

『………?!』


力強く伸びている稲苗のような色をした綺麗な髪が、
こうべの後ろで小さく宙に揺れていた


「ここは楽しい所だって聞いたよ?なんでそんな顔してるの?」

『……ひとりだから』

「ひとり?」


その少年は私の周りをきょろきょろと見回すと、
やがてにっこり微笑んで私にこう呟いた









「オレが居るよ」






行楽地で孤独な子供
(手を差し伸べてくれたのは)(紛れもなく君)




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