そのくちびるにうかぶもの 同じ速度で罪をした あなたを想うは我ばかり 明日はしとどにあめがふる 唇はいまあなたに届くのに、いつか私はそのやり方を忘れてしまっていたのです 長い別離やたくさんの喪失を私たちは口づけで埋めようとするのだろう 掠れた喉は勝手に震えていればよい あなたにかわる人にはきっと心を揺らすことができる気がしたの やわい粘膜で感じた、あなたの深い悲しみの宥めることは実は僕にはできないのだ ああ君の海は甘くはなかった 盗んだのはファースト・キスだけだったかい ▽117 とおくにゆくまえに どうかわたしをかえりみないでおくれ おまえのいないえいえんに そのひとみをすまわせないでおくれ ▽1024 ばけもの、もうぼくのためになくな ▽1022 あなたがしんだとき ことばがいらなくなりました わたしたちをとおざけるものがえいえんになくなりました ▽628 きっと、両手で抱えきれないくらいの幸福を、生まれたときに、もらったので、これからは取りこぼしてゆくしかない人生なのだと思います。 ▽622 足跡が私を追い越すとき、私の足がもうないことを知る ▽614 あなたのダンスは下手じゃない ▽602 私に救済など施そうとしないでください。私は永遠の名誉ではなく一人を追う軽い有限の命が欲しいのです ▽527 嘘の出来に満足ですか ▽526 重たい鍵盤をなぞる指のかるさを知っている ▽523 少しだけ言葉を探してみたい あなたのためだけの言葉を ざりざりと真実を噛む ああもう自分に都合のいいことを祈ってもいいのだ あなたが望むほど私は弱くない すべてが始まる前に折れてしまいたかった 君に心をあげようか 何もかもいらないと思った僕には生だけがありました 亡骸さえ残してくれず次のお前 あなたが死んだあなたはあと何年生き続ける 君のこと思い出す度に君が死んでいく気がするよ あやまちが足りない 俺たちを世界が全否定してくれるような確かな間違いが つらぬいてまほろば 長いだけのまつげで何を抗えたでしょうか 美しいだけの瞳で何を伝えられたでしょうか 追伸 薄荷が食べられるようになりました たまきわるさずかりもののいのちかな 眠りにつく前に告げて欲しかったよ すっかりとけたこおりを飲む あなたが欲しがった熱でとかした 攫ってやるとしか言えないとか 氷砂糖に埋まる 焼酎の水底から嬉しげなあなたを見た 指が重さを恋しがる 生きよ、みたしみたし 踏むことはせずにお前の影を見る ねえ信じてもいいかい めちゃくちゃきらめいて 夢を思い出せなくなるまで眠ろう 今日のことは全てが終わってしまってから思い出すであろう 息さめる 星を見る あなたが瞬く その目の中に 流星を見た きっと何度焼かれたって死ねないのだわときれいに笑う どうして君が好きかって君は知らなくたっていい理由をひどく乞う わたしの生きるための理由と化した嘘 やはりコーンスープが必要でした どこまでもどこまでも、あなたの心臓の動く音を聞きながら 宇宙が色素沈着したような それでもいいよ 笑ってくれ お前のへたくそなそのかおが好きなんだ もお言いたかないんだ 棺の底で寝過ごすなよ 涙をこらえるために空を見上げるのは無理そうだ これ以上わたしを置いて行く気かな 残滓、お悔やみ申し上げます どうか私の声を奪ってくれ ラストダンスにお呼ばれする ▽522 あなたが好きでした、そういうことにしておいてください ▽521 あなたは私が好きだったの世界が好きだったの ▽514 悲嘆することはないあなたの亡骸はきちんと僕が持って帰る あなたの命はきちんと僕が持っててやる ▽513 繋ぐ手のない帰りみち ▽512 それは十字架 ▽504 広義の生 レクイエムをハミング ジョーカーだけのオセロ 矯正視力で生きてゆく All ‘you’ I’ve ever called are you only. 不揃いな文字 お前が死んだら悲しいと誰が言った あなたの薬指はご用意できております 嘘ゆうふりは楽しかった? もっと大気でいたかった 咲き戻るまで水をください ねえ僕愛にたかっただけでしたよ 手の甲に毒を塗っておこう 取り返せるなら 永遠を閉じ込める過誤をやろう クレーターをつけるしかできない 名付け親の墓碑を彫る お互いに愛しても平行線 儚いほうがかわいいでしょ ゆえに喉氷を溶かします 十字架を胸に刻んで今日もほどよい終末だ 肩口で揺らす指の熱 誰が言えるですかそんな与太を 花冠は甘んじてその日を待っている あなたを惜しむなんてわたしだけで良かったので ありきたりにできあいの至高の愛 赤い靴を履きつぶしてなら歩けます 貴方が産まれて死ぬまでの全ての歳差 つまり全てが嘘なのね 喪失痕の縫合糸 いけないよ 何年か後の命日になるのさ 今日も世界を一輪ざし ▽429 僕の背中を返して ▽428 log |