それから喉に刻むこと


 それは十字架
 いつか神さまがそうしたように僕たちだってそうしよう
 鳴かず飛ばずの夏が来る
 たくさん死のう、飽きるほど幸せになろう
 どこもかしこも分娩室
 ひとつだってあなたのためにならないことをしよう
 あなたが拭ってくれなかった口紅を落とす
 広義の生

 レクイエムをハミング
 ジョーカーだけのオセロ
 矯正視力で生きてゆく
 All ‘you’ I’ve ever called are you only.
 不揃いな文字
 お前が死んだら悲しいと誰が言った
 あなたの薬指はご用意できております  
 嘘ゆうふりは楽しかった?
 もっと大気でいたかった

 咲き戻るまで水をください
 ねえ僕愛にたかっただけでしたよ
 手の甲に毒を塗っておこう
 取り返せるなら
 永遠を閉じ込める過誤をやろう
 クレーターをつけるしかできない
 名付け親の墓碑を彫る
 お互いに愛しても平行線
 儚いほうがかわいいでしょ

 ゆえに喉氷を溶かします
 十字架を胸に刻んで今日もほどよい終末だ
 肩口で揺らす指の熱
 誰が言えるですかそんな与太を
 花冠は甘んじてその日を待っている
 あなたを惜しむなんてわたしだけで良かったので

 ありきたりにできあいの至高の愛
 赤い靴を履きつぶしてなら歩けます
 貴方が産まれて死ぬまでの全ての歳差
 つまり全てが嘘なのね
 喪失痕の縫合糸
 いけないよ
 何年か後の命日になるのさ
 今日も世界を一輪ざし
 僕の背中を返して


 さよならを言うのなら天気は花火の夜がいゝ
 煙であなたの顔を見ずに済む

 さよならを言われるのなら天気は花火の夜がいゝ
 閃光であなたの顔がよく見える







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