砂糖を入れる前


それは、矛盾。なのだと思った。甘えたいと思うことは、たびたびあったけれど、それを態度には出せなくて、あれ、何で体は動かないのだろうと疑問に思って。あ、そうか。自分は彼がくれる優しい温かい何かが怖いのだと気づいた。じゃあ、心と体の葛藤はどうすればいいの。それは、自分のなにかが変わらないといけないと思うんだ。気づくんだ。けれど、なにをしたらいいのかはいつも分からないまま。結局変化なんて訪れない。

「鬼道は、」

俺の前にしゃがみこんで、額を突き合わせてきた彼は言う。幸せ?って。こっくりと頷くと嘘つくの鬼道は下手だな、なんて頬を包まれながら笑われた。なんで彼にはばれるのだろう。一体なにを見てるのだろう。自分にも見えない何かが見えればいいのに、そんなの神様だって出来やしないよ。分かってる。はずなのだ。

「もう、鬼道は伸ばせる」

「何を」

「分かってるだろう。全部」

体をきつく抱きしめられたのは、それを抱きしめ返したのは初めてだった。ああ、やっぱり温かい。手を伸ばすのはこんなにも簡単だった。でも、まだ彼の心を掴むことはできないから、それまでは服を掴むことしかできないのを許してほしい。彼が嬉しそうに微笑むのをみて、自分のどこかがじわり、と溶けたのを感じた。幸せ。




情けが愛しいのはヤてさんより、相互リンクお礼に頂いちゃった小説になります!!
もっ…!なんですかこのにじみ出る愛しい気持ち……!
甘える事に戸惑いを覚える鬼道さんが好きだ…!大好きだ…!!!
はヤてさん、素敵な作品本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いしますうううう!!!


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