2.5 SSS | ナノ

もし夢の続き主がサカールで捕まったら6



結論からして、飲んではいけないものを飲んでしまった。数分前に美人にホイホイされて飲んでしまった俺、本当にバカじゃないのか?

「………」

俺がさっきの青年からもらった飲み物が、所謂媚薬ということに気づくのにそう時間はかからなかった。身体が熱い。強いて言うなら特に下腹部が熱い。クッションを抱えて隠しているからバレてはいないと思いたい。今ならグランドマスターの言った「とっておきのもの」も、俺にグラスを手渡してくれた美人が「楽しんで」って言ったその意味も分かる。ちくしょう「そういう」意味だったのか!ロキが俺を助けてくれたから今まで実感がほとんどなかったわけだけど、俺はロキの性奴隷なわけで。本当に俺ってアホだ。自分の置かれている状況に対する理解と危機感が足らなさすぎる。自己嫌悪に苛まれる最中にも身体の熱は治らない。目を強く瞑って耐えようとするけれど、むしろひどくなっていくばかりだ。

「おい、ナマエ」
「…ろき、っぁ、」

ロキが俺の名前を呼んで手首を掴む。掴まれただけなのに、その感触が甘い快感に変わってびりびりと俺の背中を走っていった。まさか肌に触れられた時のその刺激さえも気持ちよく感じてしまうなんて思いもしない。

「っちが、ごめん、俺、」
「………、」

驚きと共に普通じゃない、上擦った声が出てしまったのが恥ずかしくて顔が熱くなる。取り繕うように何か言おうとしたが頭まで霞みがかって言葉が出てこず、何も言えなかった。そしてそんな俺の反応を見て、ロキは表情を険しくする。

「戻るぞ」
「でも、今抜け出したらまずいんじゃ」
「安心しろ、もう始まっている」
「は…」

ロキの言葉を聞いて、そこで改めて周りを見渡す。
隣でも、向かいでも、後ろでも。会場のあちこちで人々が絡み合っている。照明はいつのまにか落とされ暗くなっていて、会場は如何にもそれらしい雰囲気に包まれていた。

「ぁ……」

言葉が出ない。動けない。この場から早く抜け出さないといけないのは、分かってるのに。
どくどくと中心が脈打っている。視覚から与えられる情報は新たな熱を生んでいく。
ああ、俺もあんな風に──、
考えたらいけないのに、そう思ってしまった。考えてしまったら、想像してしまったら、この熱はもっと酷くなる。そう分かっているのにやめられない。目の前で繰り広げられる光景に、理性が本能によって蕩かされゆく中、不意に顎を掬われ、ロキの翠色の瞳が俺を捉えた。そして、

「少しの間だけだ、我慢しろ」
「ぇ、」

顔が近づいて、咄嗟に俺は目を閉じた。やがてふにゃりと押し付けられる薄い唇。
それは触れるだけのキスだった。

「行くぞ」
「っ」

上唇を柔らかく食まれてから離される。そして何事もなかったかのようにロキは俺にそう告げて、瞬間身体がふわりと浮いた。その時の衝撃さえも快感になってひくりと身体が震えたが、口を1つにひき結んで辛うじて声を殺す。ロキの腕に支えられている膝裏が、背中が熱い。それどころか身体中が熱かった。触れられているところが、気持ちいい。もっと、触ってほしい。そんなことを一瞬でも考えてしまった自分がはしたなくてぐ、と拳を握る。見かけによらず力あるんだななんてどうでもいいことばかりを頭に浮かべることにした。ああでも、神様だから当然か。
うろりと目を動かして俺たちが座っていた方に視線をやれば、そこには唇を合わせた俺たちが座っていて。

「ロキ、」
「あれば謂わば残像のようなものだ。しばらくしたら消える。今の私たちは見えていないから安心しろ」

俺がどういうことかと聞くまでもなく、ロキはつらつらと説明を述べる。
この場から抜け出す為とはいえ、魔法まで使わせてしまった。この星に来てからずっとそうだ。俺はずっと、ロキを困らせてばっかりで。
本当に、俺は何もできない。足手まといで完全にロキのお荷物だ。

「……ごめん、俺…迷惑ばっかり掛けて」
「ああ、全くだ」
「……っ」

ああ。
この前の時もそうだった。言葉ではそう言っているのにその口調は、俺に触れるその手つきはひどく優しくて。
どうしようもなく泣きたくなって、俺はロキの肩に顔を埋めた。




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