あけよめことよろ!2019
あけましておめでとう〜〜〜!!!
夢の続き主とスティーブ
「Happy New Year!!!!!!」
スタークさんのマイク越しの声、それに合わせてわあっと一際大きな歓声と共にクラッカーのパァン!鳴る音、拍手の音。
こっちに来てから初めての大晦日、そしてたった今、こっちに来てから初めての新年を迎えた。紅白歌合戦も年越しそばも除夜の鐘も、日本らしいものは何もないけど、スタークタワー開催のニューイヤーズイブパーティーも中々楽しいもんだな。
「明けましておめでとう」
「スティーブ、明けましておめでとう」
隣にいるスティーブが今年もよろしくね、と笑顔でそう言ってくれた。それに笑ってこちらこそ、とグラスを合わせる。かちんとグラスを合わせた音は、周りの喧騒に掻き消されて聞こえなかったけれど。
まさかあのNYでの戦いの後からこっちに残ることになるとは思っていなかったから、俺の人生計画はめちゃくちゃに狂いっぱなしだ。
「(色んなことがあったなあ)」
思えばあの戦いから今までの日々は光のような速さで駆け抜けていった。あっという間だったけれど、本当に沢山の出来事があって、沢山の出会いがあって。凄く濃い、充実した半年間だったと思う。何よりも楽しかった。何事も最終的に楽しければそれで良いのだ。来年も、というかもう今年か、楽しい、良い年にできるといいな。
とまあ、1人でこの1年を振り返ってうんうんと感慨深げにうんうんと頷いていたのだが。
「えっえ、ええ?!」
周りの人みんながすぐ近くの人と一斉にキスしだしたんだけど?!へえ?!どういうこと??!
なに?!
目を白黒させていると、スティーブが「驚いたかい?」と俺を見て微笑う。
「あの、これ、何?しゅ、習慣?」
「習慣だね、少なくとも僕の時からあったと思うよ」
「ひえ……」
何それ、アメリカ怖い。ぼっちには恐ろしいイベントである。ていうか周りがみんなキスしてるから普通に相手が居なくて俺めちゃくちゃ浮いてる。
うう、なんだか気まずいぞ、そんなこと思ってるの俺だけかもしれないが。今この瞬間だけ日本に戻りたい……!と亀のように首を竦めていたのだが、ふとスティーブはキスをしている周りの人たちをただぼんやりと見ていることに気づいた。
「スティーブはしなくていいの?」
「え?」
「キス、みんなしてる」
「ああ、僕は……」
何かを言いかけて、そこで不意に俺を見つめる。え、なに、そんな真っ青な瞳で見つめられると照れる…!
「じゃあ、僕たちでしようか?あぶれてる者同士」
「え、あ、へっ?うん?」
青い綺麗な瞳に見つめられるのに未だに慣れていないからテンパって、スティーブの言っていることを完全に理解せずにとりあえずイエス、と頷くと。
「へ…っ」
両肩に優しく手を添えられたかと思うとスティーブの顔が近づいてきて。そして、間を置かずに頬に柔らかな、温かい感触。
「………?!」
キスをされたと気付いたのはその数秒後。スティーブにされたことを理解した瞬間に瞬く間に顔が熱くなっていく。
「えっあ、あの、あ、」
何も言えない、口がアワアワして言葉を発そうとしても空回りしてしまって口にできない。ありがとうって言うべきか?いやこの状態じゃ無理だ!それにこの場合俺もキスをお返しすべきなのか?そうだよな?ああ顔中が熱い!そんなきれいな色の瞳で俺を見つめないでくれ何も考えられない!ああもう、
「っ」
ええいどうにでもなれ!!半ばヤケになって背伸びしてスティーブの頬へと自分の唇を押し付ける。スティーブはといえば、いきなり俺にされたことに驚いたように目をぱちくりとさせていた。まさか俺がお返しをするとは思っていなかったのだろう。俺もだ。まさかノリに乗って(いっぱいいっぱいになってとも言う)ここまでするとは思わなかった。
「はっ、ハッピー、ニューイヤー……」
ぱっと唇を離して、スティーブを見据え。声も裏返ったし、どもったし今完熟トマトみたいに真っ赤な顔をしているだろうけど、それでもスティーブは顔を綻ばせて。
「ハッピーニューイヤー、」
柔らかい笑みと共に返してくれたことに、嬉しくて俺もへらりと笑う。
ああ、今年も良い年になりますように。