黄瀬のことは何回か学校内で見かけたことはある。後輩に運動神経抜群のイケメンがいると女子が騒いでいる手前もあって、一方的に知っていた。
黄瀬とちゃんと会ったのは今年の春。バスケ部に入部してたったの一週間で一軍に昇格した彼と、俺は主に一軍のマネージャーをしていたから、話す機会が自然とできた。明るくて話題の絶えないイケメンな後輩だな、とまあ普通にそう思っていたわけだが。
夏合宿中、夜の自由時間の時に呼び出されて何の話かなあと思っていたら、

まさか告白されるとは。

今俺はすごくびっくりしている。


「ええと、…黄瀬?

……大丈夫か?」

「だっ、大丈夫ってなんスか!俺は本気っス!」

とりあえず夏の暑さで頭をやられてしまったんじゃないかと思ったが、そうではないらしい。


「黄瀬、本気と聞いた上で一応聞くけど、」

「な、なんスか」

「俺、男だぞ」

そう、俺は男だ。
どっからどう見ても男だ。

「知ってるっスよ。見れば分かるっス」
「だよな。
…もしかしてお前ゲイなの?」
「なッ?!
違うっスよ!俺女の子大好きだし!」

と一気にそうまくし立てた黄瀬は、でも、とそこで口ごもる。

そしてしばらくして、

「…分かってるっス、こんなのおかしいって。
でも俺、みょうじセンパイを見る度にどきどきするんです。どうしようもないくらい、胸が締め付けられて、苦しくて、」

「………」

みょうじセンパイが、好きなんです。
あの黄瀬が、目を逸らして顔を真っ赤にしながら、そう言うなんて。

「………(こいつガチだ)」

どうやら本当に俺のことが好きらしい。

「………(よし、よく考えろ俺)」

人生で初めて告白された。男にだけど。
黄瀬は良い奴だ。そしてイケメンだ。女の子には困らないようなそんなイケメンが、同性である俺に、告白をしてきた。
どれだけの勇気と覚悟が要ったのだろう。俺には考えもつかない。

ちら、と黄瀬を見れば、俯いていて顔は見えない。けど髪から覗く耳が真っ赤だ。固く握りしめた手は、震えている。


断るか、承諾するか。

そんなことを考える前に、俺は自然と結論を決めていた。




「………こんな俺で、良ければ、
よろしくお願いします」



知り合いましょう



(ほ、っ…本当っスか…?)
(うん。黄瀬が本当にそれでいいのなら)
(……ッ!)


その時の黄瀬の嬉しそうで泣きそうな顔を、俺は一生忘れないだろう。



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