粗末なモノですが・2。


「粗チンっていうと……チンコがちっせぇっていう、あの粗チン?」
「ハッキリ言葉にされると傷付くので、もう少しオブラートに包んだ言い方でお願いします」
「そんなもんオブラートに包みようがねえよ」

 チンコが小さいという以外に、どんな婉曲な表現を使えというんだ。

「――嘘だろ、粗チンとか」

 思わず視線を股間に向けた瞬間、秋坂の凛々しくて男らしい眉がキュッと寄せられ、その口からすべてを諦めたような長いため息がこぼれ落ちた。

「自分が粗チンの童貞野郎だなんて嘘をつく男がいると思いますか」
「いや……だって、チンコでかそうな顔してるじゃんお前」

 人並み以上に恵まれた体格と、精悍な男らしさに溢れた正統派の二枚目顔。

 こういう男前は相手に困ることがないから大抵の場合は経験豊富で、しかも雄フェロモン全開の顔に見合うだけの立派なモノを持っているものだ。

「顔はともかく、昔から身体はデカかったので、当然モノも大きいだろうと思われることがひたすら苦痛でした」

 凛々しい眉を寄せて、壮絶な過去を語るかのような口調で自らの粗チンを暴露する男前の後輩のあまりに真剣な表情に、さすがに俺も冗談だろうと笑える雰囲気ではなくなってしまう。

「修学旅行の時も誰かに股間を見られたりしないように隠れて風呂に入っていたし、部活の合宿でもシャワーだけは他の奴らと絶対に時間が重ならないようにしていました」
「そこまでか」
「身体つきに合わない粗チンを笑われるんじゃないかと思うと、寄って来る女も怖くて鬱陶しくて」

 なるほど。
 秋坂の女嫌いは下半身のコンプレックスが原因だったのか。

 ゲイ仲間なのかもしれないと誤解していたけど、こんな意外な理由があったとは。

 この男前の後輩が、どんな女でも簡単に落とせそうな顔の下で実は誰にも言えない悩みを抱え込んでいたのかと思うと、胸が堪らなく切なくなった。

「なあ、秋坂」
「はい」

 居心地のよい腕の中でモゾモゾと身体の位置を変えて後輩の顔を見上げると、逞しい腕が微かに動いて、秋坂が俺を見つめ返してくる。

「ちょっと見せてみ?」
「はっ!?」
「お前のがどの程度のモノなのか、俺が確かめてやるから」

 そう言いながら下半身に手を伸ばしてベルトを緩めようとすると、秋坂は腕の中に抱いていた俺の身体を力いっぱい引きはがして後退りした。

「何言ってるんですか。先輩にそんなモノ、見せられるワケないでしょ」
「何でだよ。お前さっき、俺のこと好きだって言ってたじゃねーか」
「好きだから、余計に見せたくないんです。幻滅されて嫌われたりしたくありません」
「アホか。チンコが小せえくらいで嫌いになったりするくらいなら最初から惚れねえよ」
「ちょ、先輩! 駄目ですって……!」

 精一杯抵抗してみせたところで、秋坂が本気で俺を跳ね飛ばしたりはできないことは計算済みだ。

「――水瀬先輩!」
「うるせえ、脱げ!」

 もうほとんど犯罪者ではないかという勢いで無理矢理秋坂のデカい身体を押さえ付けた俺は、酔いが回った頼りない手つきでスラックスの前を寛げ、濃紺のボクサーパンツを引き下ろして秋坂のムスコを露出させた。

「おお……」
「……」

 決して広くはないリビングに漂う、何とも言えない微妙な静寂。

 ボクサーパンツから元気よく飛び出してきた秋坂のソレは……。

「――思っていたより、普通かも」

 確かに控えめサイズというか、ちんまり小振りではあるものの、一応日本人男性の平均値の範囲内と言えるサイズのモノだった。

「小指の先っぽくらいしかない豆粒サイズだったらどうしようかと思ったけど、このくらいなら全然問題ねーだろ」
「どれだけ小さいと思っていたんですか」
「お前があまり真剣に思い詰めるから心配したんじゃねーかよ」

 俺のモノよりはちょっと細めで短いけど、本人が気にするほど病的な短小じゃないし、皮もちゃんと剥けている。
 このくらいのサイズの男なんて、そこら辺に普通にいるだろう。
 ――そのほとんどが、小柄で細身な子猫系男子かもしれないけど。

 秋坂の場合は、見事に鍛え上げられた大柄で逞しい身体と、男性フェロモン全開の精悍な顔立ちが悲劇の要因だった。

 可愛い子猫ちゃんなら許されるはずの可愛いジュニアが、屈強な身体にぶら下がっていると何とも言えないアンバランスさを醸し出してしまうというか……。

 秋坂に言ったら落ち込むかもしれないから言わないけど、何だか可愛らしい。

「もう気が済んだでしょう、先輩。手を退けて下さい」

 明かりの下でじっくりと股間を観察されて気まずいのか、秋坂が落ち着かない様子で俺の身体を退けようとする。

 ――が、本人の言葉とは裏腹に、視線に曝されたペニスが少しずつ角度を上げて硬くなりつつあるのを、俺は見逃さなかった。

「そんなこと言って、勃ってるじゃん」
「っ!」

 しっかりと皮が剥けて露出した亀頭を指先で軽く突いただけで、秋坂は凛々しい眉を寄せて、微かに息を詰めた。

「舐めていい?」
「な……っ、何言ってるんですか! 先輩にそんなことさせられませんって」
「俺がしたいんだからいいだろ。お前のだって期待して硬くなってるし」
「別に期待はしていません。その綺麗なエロい顔で見られて、勃起しない訳がないでしょう」
「エロいのはお前だろ」

 そんなやり取りを続けながらも徐々に硬度を増して反り返る幹を焦らすように指先で撫で上げて、先端を弄ってやる。

「み……なせ、先輩」
「もうビンビンになってる」

 濃い茂みから顔を出して健気に勃起する秋坂の小ぶりなペニスが可愛くて可愛くて。
 俺は、真っ赤に張り詰めたソレの先端をぱっくりとくわえてやった。



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