粗末なモノですが・4。


 秋坂にだったら、最後まで抱かれてもいい。というか、むしろ俺がこの男のすべてを独占したい。

 そう思って勇気を出したのに、下半身にコンプレックスを持つ後輩は俺の言葉に複雑そうな表情を見せ、何故か俯いてしまった。

「それは……俺のが小さくて挿れやすそうだから、ですか」
「はっ!?」

 何でこの流れで、そう哀しい解釈をするんだ。
 どんな嫌なヤツなんだよ、俺は。

 ひと言ツッコミを入れてやろうかと思ったけど、普段は俺よりずっと落ち着いて見える男前の後輩の拗ねた表情に完全にノックアウトされてしまった俺は、秋坂の形の良い額に自分の額を軽くぶつけて、囁いた。

「馬鹿、それだけお前に本気で惚れてるからに決まってるだろ」
「!」

 たとえ秋坂のモノが規格外サイズの巨根でも、この状況になれば多分同じことを言っていたと思う。

「ヤリたくないなら、別に無理してヤらなくてもいい」

 おあずけ状態の可愛い息子を勃起させたまま固まる秋坂が何だか可愛くて、わざと突き放すようにそう言って顔を背けると、大型犬化した後輩は慌てて体勢を入れ替え、俺の身体に覆いかぶさってきた。

「ヤリたくない訳がないでしょう」
「じゃあ、さっさとヤれよ」
「――下手くそで早くても笑わないで下さいよ、先輩」

 微かに上擦った声で恥ずかしそうに呟いて。
 秋坂は、無骨な手を俺の下半身に伸ばしてきたのだった。



 ――そして、数分後。

「あ……きさか、もう、いい!」

 俺は、自称童貞の後輩に組み敷かれ、恥ずかしい部分に指を突き入れられた状態で涙目になって身体を震わせていた。

「そんなに気持ちいいんですか、先輩」
「やっ、んん、あぁ! そこばっかり、触るなばかっ」
「チンポ、濡れ濡れですよ」
「見、るな……!」

 そういえば、秋坂は研究熱心で勘がよく、任された仕事は何でもそつなくこなしてしまう男だった。

 可愛い後輩のデビュー戦を優しくリードしてやろうと思っていたのに、さっきから未経験者とは思えない指の動きに翻弄されて、張り詰めたペニスの先端からはいやらしい蜜がダラダラと零れっぱなしになっている。

「こんなに俺の指を締め付けて、エロい身体ですね」
「や、もう……ゆび、やだ……っ」
「そうですね、俺もそろそろ限界です」

 そう言って秋坂は俺の中をまさぐっていた指を引き抜き、ほぐされて熱くなった穴に硬く張り詰めた雄茎の先端を擦りつけた。

「んっ……」

 我慢汁に濡れた亀頭の感触に、小さな穴が淫らにうごめく。

「挿れますよ」
「――っ、いッ、あぁッ!」

 宣言すると同時に、未経験者のはずの後輩は何のためらいもなく俺の腰を抱え上げ、熱い肉棒を体内に突き立ててきた。

 そんないきなり突っ込むヤツがあるか! と怒鳴りたいところだけど、口からは自分でも信じられないくらい甘い声しかでてこなかった。

「あ、あ……秋坂の、入って、る」

 想像していたほどではないものの指とは明らかに違う圧迫感に、涙が滲む。

「っ、すごい締め付けだ」
「やッ! おっきく、すんな……っ、んん!」

 狭い肉壁をかき分けて侵入してきた秋坂のペニスは、初めての刺激に興奮したのか、体内で更に膨張してドクドクとものすごい勢いで脈打っていた。

 秋坂の引き締まった腹筋が微かに震え、精悍な顔は何かに耐えるような苦しい表情を浮かべている。

 しばらく無言で見つめ合った後、秋坂は俺の腰を抱え直して、獣のような荒々しさで激しい突き上げを開始してきた。

「や、あ、アッ、だめ、そんなにはげしく、したら、……変になるっ」
「すみません。もう自分でも止められない」
「ッ、秋坂ぁ、あっ」
 
 ガツガツと腰がぶつかるたびに、股間で揺れる俺のモノの先端からは濃い粘液が飛び散って何とも言えない雄臭を撒き散らす。
 太過ぎず長過ぎない秋坂のソレは、ちょうど張り出した先端部が俺の敏感なポイントに届くサイズになっていて、奥を突き上げられるたび、体内から与えられる強い刺激に俺の口からは甘い声が零れ落ちた。

「そんなにケツがいいんですか」
「き、もちいい……秋坂のチンポ、すごくいい……あ、あンッ」
「っ、先輩……!」
「どうしよ、初めてなのに、……もう、イキそう」

 初めて後ろを掘られたのに、気持ちよくてイキそうになっているなんて、何だか自分がとんでもない淫乱になってしまったような気がする。

 戸惑いながらも、こみ上げる射精感を我慢できなくなった俺は雄の本能のまま、恥ずかしい汁に濡れた自らのモノを握って、突き上げに合わせて扱き始めた。

「やぁ、あんっ、いいッ、チンポ、ぐちゃぐちゃになる……っ、あぁッ」
「エロ過ぎですよ、先輩」
「秋坂、も、イキそう? い……イって、あ、あ、ッ、あぁッ!」

 打ち付ける腰の動きが速くなって、今までに感じたことのない強い快感に目の前が真っ白になっていく。

「あきさか、っ、イクッ、出る……あぁああ、あんッ!」

 体内の敏感なポイントを突き上げられるのに合わせて、手の中で血管を震わせるペニスを根元から先端まで扱き上げ、ぬるついた先っぽを指先で撫でた瞬間。
 真っ赤に充血して張り詰めたモノが弾け、先端からはおびただしい量の白濁液が噴き出し、勢いよく飛び散った。

「水瀬先輩……!」

 初体験とは思えない激しい動きで俺を泣かせた後輩は変なトコロで律儀さを見せ、射精する瞬間にモノを引き抜いて、噴き出してきた熱液を俺の腹にぶっかけたのだった。


○●○


「先輩、怒っているんですか」

 激しい交尾の痕跡を消し去ったベッドの上で、替えたばかりの新しいシーツと布団にくるまって顔を隠したままの俺をシーツごと抱きしめて、秋坂は困ったような声で俺の機嫌を窺ってきた。

「お前、初めてとか嘘だろ。ホントは男ともヤリ慣れてるだろ絶対」

 どう考えても、さっきのアレは俺だけが乱れて恥ずかしい姿を曝け出してしまったような気がする。

 もう、恥ずかしくて秋坂の顔をマトモに見ることができない。

「先輩以外の誰に、俺がこんなコトをするんですか」
「だって、すげー上手くて気持ちよかった……」

 本当は、誰かにそのテクニックを実践済みなんじゃないのかよ。
 シーツを鼻まで下げて、男前の顔をチラッと見つめると、秋坂は不本意そうな顔をして俺を抱きしめる腕に力を込めた。

「それは、モノが粗末な分テクニックで先輩に気持ちよくなってもらいたいと思って頑張ったからですよ」
「……」
「一回ヤって飽きられたりしないように必死だったんです。分かって下さい」

 本当はこんなこと言いたくなかったのに、と小さく呟く後輩の顔が、赤い。

 秋坂のこんな顔を俺だけが知っているのかと思うと嬉しくて、俺はシーツから手を出し、ひと仕事終えてちんまりと茂みの中に横たわっている秋坂の可愛いムスコをそっと握った。

「っ、先輩!?」

 手の中でピクッと震えたそれが、あっという間に熱を増して硬くなっていくのが堪らなく愛しい。

「俺以外の奴に使うの、禁止」

 その代わり、俺もずっとお前だけのものだから。

 そう言って手の中のソレをそっと撫でると、秋坂は顔を赤くしたまま真面目な顔で俺に頭を下げたのだった。

「粗末なモノですが、よろしくお願いします」



end.

(2013.4.14)




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