残暑も去り、肌寒さがひしひしと感じられるようになった11月某日。
夏服から色とりどりのカーディガン姿が増えた銀魂高校にも例に洩れず秋が訪れていた。
教室内から見える木々も色づき始め、青々と茂る緑も姿を隠している。


「ぎーんちゃん!もうすぐあの日アルな」

「あぁん?あの日?あー…女の子の日?ふごっ」

「レディーになんて事聞くネ」

「レディーは顔面にパンチなんか食らわしません!!」



SHRの時間とは名ばかりに、放牧状態の3Zは各々好き勝手やっている。新八は隣のクラスのお通ちゃんの写真(盗撮)を眺めるのに勤しんでいるし、その姉のお妙は黒髪ツインテールの少女・九兵衛とガールズトークに花を咲かせている。

その中、泣く子も黙る風紀委員。近藤・土方はぼんやりと賑やかな教室を眺めていた。


「はぁぁぁぁぁ」

「……さっきから溜息ばっかり吐いてどうしたんだよ近藤さん」

「この教室を二酸化酸素で埋め尽くして皆の息の根を止めるつもりですかィ?だったら手伝いやしょうか?」

「テメェは寝てたんじゃないのかよ」


さっきまでアイマスクを装着して寝ていた筈の沖田が突然話に参戦しだし、土方は呆れ半分にどこか納得した眼差しで沖田と銀八・神楽を見やった。先程の銀八と神楽の会話が聞こえていたのだろう。

そしえ不機嫌そうな表情を一瞬見せた沖田は何事もなかったかのように無表情を決め込んだ。
空っぽの頭で色々な事を考えてるに違いないのだろうが、昔からの付き合いがある土方でさえ、時折読み取るのが難しい時がある。だが今のは単純に“ヤキモチ”といった類であろう。

「……で?近藤さんはどうしたって?」

「おぉ……聞いてくれるかトシ!総悟!俺のお妙さんがな、つい最近誕生日だったんだよ。俺はお妙さんを祝うのと同時に素敵なお妙さんを産んでくれたお母様、お父様にも感謝を送り、「すまん、近藤さん長くなりそうだから手短に頼むな」

「う、うん。何だかんだで俺はお妙さんにプレゼントを贈ろうと思ったわけですよ、うん」

「で?受け取ってもらえなかったプレゼントはどうしたんですかィ」

「あれ?俺受け取ってもらえなかったって言ったけ?いや、そうなんだけね」


尊敬している近藤にさえも、沖田は理解できない所があった。それはまさしく近藤が心酔しているもの、色恋の事である。何をそんなに夢中になれるのだろうか沖田には全く理解できないでいた。
基本異性の容姿などには全く興味のない沖田は勿論、綺麗だの美しいだの可愛い等といった形容詞を使った事がない。だからといって、年相応の性的欲求がないといえば嘘になるが、特定の誰かに執着する事はなかった。

ただそれは本人が気付いていないだけで、周囲の人物達には暗黙の了解と化した仄かな恋心がそこには確かにあった。


「今年のお妙さんの誕生日、日曜日だっただろー?平日だったらな……渡せたと思うんだよ、ぼかぁ」

「日曜も正月も関係なく受け取ってもらえなかったと思うぞ」

「すいやせん近藤さん、俺も土方さんに一票でさァ」

「泣いても良い……?」


机に突っ伏して完全にいじけてしまった近藤は何時もの事なので放置プレイをしたまま、ふと土方は思いついた事をそのまま口に出してみた。


「そういえばさっき、銀八をチャイナ娘が騒いでいたのを聞いたんだが、アイツも今週誕生日なんだってな」

「……アイツ?」

「だからチャイナ娘」

「……へぇー」


全く興味等ありませんといった風にアイマスクを装着し、寝る態勢…言い直せば逃げるようにして会話を強制終了させようとした沖田だが、体は正直でそれを裏表逆のアイマスクが物語っていた。
口元がにやけて引き攣るのを必死に隠しながら、土方は日ごろの仕返しとばかりに沖田に突っ掛かる。

「アイツの誕生日祝日だからな。可哀想だから今度皆で―「土方さんがロリコンだったとは知りやせんでした。まさかチャイナを狙ってたとは」

「は!?おまっ、何言って……、」


笑顔0%、邪気100%の土方だけに向けられる笑顔に調子にのった事を深く後悔することになったのであった。




1.「狙ってねーよ、睨むな!」






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