24.


高杉が去り、二人の間には何の障害も無くなった。ただの一男と女。二人の糸が結ばれるまで長い時間がかかってしまったが、繋がった糸は絡まって簡単にはずれはしないだろう。

―そう深く深く、絡まった赤い糸を…


「…もう離さないアル」

「…俺だって」


今まで抱きしめる事も抱きしめられる事も彼女の特権で、私には夢のような事だった。
だけど今こうしてそれが成されてる。
沖田の体温を直に感じる事ができるし、トクトクと胸の鼓動も聞こえてくる。
五感をフルに可動させ体中で沖田を感じられる。


「沖田の心臓すごいドキドキしてるネ」

「チャイナだって破裂すんじゃねぇのってくらいすげェぜ?」

「…沖田はこういうの慣れてるんじゃないのカ?」

「こんな密着したのなんか初めてでィ」



彼女とは恋人らしい事はあまりしなかったらしい。だが、キスは1回した事があると告げると抱きしめられながら上目遣いで分かりやすいくらい悲しい顔をした。でもこんな堂々とヤキモチを妬けるのも何だか嬉しい。


でも…


「沖田…、は、恥ずかしいから離れるアル」

「何で。良いじゃねぇか」

「だって、今までこんな事した事ないのに…。キモイアル」

「……無理矢理犯すぞ」



力一杯に沖田から離れたが、その勢いで沖田は尻餅をついてしまった。

あ、やばい。また始まる。
あと3秒後には沖田が立ち上がって、私に蹴りを入れてくるはず。
思わず臨戦態勢になる神楽だが、一向に沖田が立ち上がる様子が無い。

不信に思い恐る恐る近付くと声を殺して笑っていた。


「何笑ってるネ…。変態」

「ククッ…、だって何か久しぶりじゃね?こんな風にふざけんの」



そう言えばそうかも。
今までお互い変に意識しすぎてたのもあるが、前みたいにじゃれ合う事も少なくなっていた。

久々に味わうこの感じ。やっぱりコイツと居ると素の自分が出せる。それを含めて好きになったと実感する。
気を利かせる事も無いし、前みたいにまた喧嘩もできるんだ。



「お前さぁ、また前みたいに喧嘩とかできるんだ、とか思ってんだろ」

「え?できないアルか!?」

「あのなァ…、しようと思ってするもんじゃねェだろ?それに両思いになったのにまた喧嘩ばっかすんの?」

「じゃあ他に何するアル?」



まさか質問に質問で返ってくるとは思ってもいなかった沖田は少したじろいだが、地面に座ったままう〜んと考え始めた。答えはすぐに返ってきた。


「一緒に帰ったり?」

「うん」

「ちゅーしたり?」

「……うん」

「あ、今度はチャイナを苛める女共から守ってやりまさァ!」

「うん…、期待してるアル。あとは?」

「あと?……セッ「やっぱもういいアル」


あ、そ。と少しふてくされた様子の沖田を見て素直に可愛いなと思った。

少ししゃがみ、座っている沖田と同じ視線になるとパチリと目があった。近くで見るとこんな目の色なんだ…。髪の色も綺麗だなぁ、柔らかそう。

近くに居ないと分からない事もたくさんある。これからもっともっと沖田の事知りたい。良いとこは勿論、嫌な所も。


―ちゅっ―


「…ん!」



いきなり顔が近付いてきて、気付いたときにはキスされてた。
早速嫌な所1つ発見…。
沖田って1回素直になる(開き直るって言った方が良いアルか?)とすごいタラシだ…。好きってオーラが全開。


「神楽…」

「神楽ァ!?」

「良いだろィ。俺達付き合うことになるんだし」

「付き合う…。そうネ、実感ないアルよ…。」



また、くしゃっとした顔で笑った。
片思いしてた頃よりもっと好きになっちゃうアル…。



「じゃ、改めて男友達から彼氏に昇格と言う事で」

「おう…。大切にするアル」

「……無駄に男前だねィ。そういう台詞は俺が言うもんでさァ」



私は恋初心者アル。気取って女の子らしい事は何一つできないけどこれだけは言えるヨ。
あなたを他のどの女の子よりあなたを大切にするって


―…誰よりも愛するって



「沖田!大好きアル!」

「うん、俺も」



長い長い、気持ちの潜伏期間があったけど、私達の物語は今から始まる。





ボーイフレンド




おわり




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