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20.



本日は晴天
文化祭日和と言っても過言ではない。

出店を出すもの、展示の紹介をするもの、何もせず食べ歩きをするもの等様々な楽しみ方をする者があった。

3Zでは展示…と言うには規模が小さすぎる糖分の歴史がまとめられている模造紙1枚だけ。
近藤、土方、沖田、ちなみに山崎が所属する剣道部は『男だらけの喫茶店』を開いていた。
近藤が「男だらけと言っても多少の華がないと駄目だろ」と発言したことで、近藤一人ピンクのフリフリワンピースを着て接客していた。土方と沖田目当ての女性客よりも、近藤を見て退いていく客数の方が多かった。


「あんまり混まないですねィ」

「そうだなぁ。何でだろうな?トシ?」

「まずは自分の姿を見てみろ…」


土方と沖田も何時もの学ランではない。だからと言ってピンクのフリフリを着ているという事でも勿論無く、ウエイターの服を着ていた。

沖田には今日中に決着を着けなきゃいけないことがあった。昨日から悶々と考えていたがまずは彼女から…、という結論に至ったのだ。



「土方さん俺ちょっと抜けて良いですかィ?答えは聞きやせんけど」

「なら聞くな。…誰かと回ってくるのか?」

「まぁ…回ってくるっていうか、ケリつけてくるっつうか?」

「ふーん?…略奪愛ってとこか?お前ってドMだったっけ?」



―…思い出したのは昨日の銀八の言葉

『多串君でさえお前の気持ち少しは気付いてるっつうのに本人がなぁ……』




じゃあ頑張れよーと接客に戻る土方さんの後ろ姿を呆然と見ていた。

(この人気付いてたんかィ…)


……ん?ちょっと待てィ。


「土方さん!」

「ん?まだ居たのかよ。早く行って早く戻ってこい」

「あんた俺の気持ち知ってて…、知っててなんで男にチャイナ紹介したんでさァ……」

「は?んなの決まってんじゃねェか?」

「もしかして…俺に気付かせるためにですかィ?」

「いや、日頃の復讐」

「死ね、土方」





**********




彼女と待ち合わせは屋上にした。
メールで用事があるとだけ連絡を入れ、相手からも分かった、の4文字だけの短い返信が返ってきた。

屋上の手すりにもたれて、校庭に広がる屋台や派手な飾り付けを見回していた。
そこで見つけたのは目立つ桃色頭と眼帯の男。
神楽の両手には食べ物ですでに塞がっていた。


二人が並んで歩ってるだけでこんなにモヤモヤするのに、よく今まで気付かなかったなと自嘲する。
今考えれば、これまでの行動はすべてヤキモチじゃないか。


「自覚って怖いねィ…」


「総悟君…?」



二人から目を離し、声がする方に顔を向けると浴衣姿の彼女が立っていた。
そう言えば和菓子の出店を出すって言ってたな…。
学校1可愛いと言われている彼女だ。ここに来るまでだって何人もの男子生徒に振り向かれたんだろうなと思う。
いつか好きという気持ちが本物になると思っていたが、本当に好きな奴を知ってしまった今続ける事はできない関係。


「あの、さ。俺、お前に言う事が…」

「うん…、神楽さんでしょ?」


まだ何も言ってないのに……。
普段無表情の沖田も、いきなり本題に入られて吃驚し、ポーカーフェイスも崩れている。


「気付いちゃったんだね。神楽さんが好きだって」

「何で…知ってるんでさァ」

「告白する前から知ってたよ…。私前に聞いたでしょ?何でOKしたのって」



確かに聞かれた事がある。あの時は答えられなかったけど…。



「私総悟君が神楽さんの事好きだって分かってて告白したの。すっぱりフってくれれば素直に諦めるつもりだったし。…それなのに総悟君OKするんだもの。本当の気持ちに気付くまで…って思うようになってた」

「………わりィ」

「…神楽さんは高杉さんって人と付き合ってるんでしょ?それでも良いの?」



そうだった、彼女と別れたとしても神楽にはすでに彼氏がいる。
今更になってって感じじゃねぇか。

―…でも

「俺はチャイナが好きなんでィ…」



気付いてしまったからには伝えなきゃいけない気持ちがある。
俺とチャイナの間にはこれ以上壊れてしまうような壁なんてないだろ?


「そうそう…私神楽さんの事大切にしている総悟君が好きだったんだよね。あんな風に想われてみたいなって…」

「……ん、俺そろそろ…」

「いってらっしゃい、私をフったんだから必ず奪って来てよね」



ヒラヒラと手を振って屋上を後にしようとする沖田。


「最後にもう一つ、」

「?何ですかィ」



「総悟君って神楽さんの事考えてると私の手強く握るクセがあったよ。口より体の方が素直みたい。私から最後の助言だから…」



それを聞くとフッと笑い、再び手を振り沖田は屋上から去っていった。






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