16.
「高杉ぃー!!委員会に提出するプリントってどれだっけ?」
「あぁ?あー……、これと、これじゃねぇか?」
それから文化祭までの4日間は忙しい物であった。まぁ、忙しいといっても3Zは特にクラスで大きな事はしないと言う方向性の展示に決まったので、忙しかったのは展示品を作成する1日目の準備期間だけであった。
だが、文化祭実行委員の神楽と高杉だけは提出する資料の整理や、パンフレット作りなどで毎日忙しそうにしていた。
授業中以外はずっと二人でいて、滅多に学校に来ていなかった高杉もこの4日間は休まずに登校している。
休み時間になれば、神楽が高杉の前の席を借り、文化祭の事なのか楽しそうな笑い声をあげ話しをしている光景が良く見られるようになった。高杉も声まではあげないものの、口角をあげ笑っているようだ。
「今まであの光景は総悟とだったんだけどな」
「……土方さん、何が言いたいんでぃ」
「文化祭きっかけで付き合う奴多いんだよなー」
「だから、何が…」
「お前は昔から顔には出ない奴だと思ってたんだけど、今の顔はすげぇぞ。"面白くねぇ"ってのが丸出し」
別にチャイナの事なんか関係ないし、高杉とできたってどうでも良い…。何が面白くないのか自分でも解らねぇ。
あー、イライラする。
「別にチャイナ達何てどうでもいいでさァ…。」
「ほー、俺は別に"チャイナ"とは言ってねぇんだけどな。"あの光景"って言っただけだし。総悟はチャイナの事で機嫌わりぃんだ?」
「!!!」
――はめられた……。この俺が土方さんなんかに……。
「死ね、土方…」
「チッ、俺に八つ当たりすんな」
そんなやり取りを土方とする沖田だが、教室の入り口に沖田を手招きする女子生徒が居た。山崎が
「沖田さーん!お呼びですよー!か・の・じ・ょ、さんから」
そんな山崎の呼び掛けに、クラス中の視線が沖田にそそがれた。
山崎後で殴ってやる…と心に近い、待っている彼女の元へ行こうと席を立ち上がった時―…
「総悟」
「何ですかィ?土方さん。話しなら後で…」
「欲しい物どっちも手に入れようと思うなよ…。欲張ると、どっちかが駄目になっちまうぞ…」
「……はっ、何言ってるか意味が分かりやせんねィ」
そう言うと席を離れ真っ直ぐ彼女の方に歩いていった。
皆が興味津々で見ている中、ただ一人神楽だけが背を向け、プリントを片手で弄っていた。
沖田はその事に気が付いたが、すぐに視線を教室の入り口に戻した。
彼女の腕を引っ張り、教室にいる生徒に見えないようドアを閉めた。
「…何?」
「あ、あのね、別にメールでも良かったんだけど…」
じゃ メールで良いじゃんと沖田が思ったのは秘密である。
「私今日クラスの文化祭の用意で忙しいの!実行委員だし、帰るの暗くなっちゃうから…あの、その…」
沖田は彼女が言わんとしている事がさっぱり理解できなかった。だが、"先に帰ってて"と言う言葉が出てこないと言う事は待ってろという事なのだろ。
「分かった。3Zの教室で待ってっから終わったらメールくだせェ」
彼女が伝えたかった事と合っていたのだろう。満面の笑みで分かったと頷き、手を振り自分の教室に戻って行った。
沖田は疲れたような溜め息を一つ吐いた。
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「へぇ…あいつの彼女初めて見た」
「…そうアルか」
「可愛いじゃねぇか?」
「…そうアルね」
沖田が教室を出てからも神楽は高杉と黙々と提出用のプリントを作成していた。
そんな神楽に高杉は違和感を感じた。
今までなら毒舌の一つでも飛んでくるのに……。
「ふーん……」
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