15.
あの後チャイナは一度もこちらを見ずに、真面目に担任である銀八の話を聞いていた。やはりあの場は自分でどうにか切り抜けたようだ。
いつも通り『よくも、あん時無視しやがったナ!!』みたいに文句の一つでも言ってくるのかと思ってた。
意外にも彼女は俺を攻めもせず、一切関わりを持とうとはしなかった。
「つー事でだ、文化祭があと4日後にあるのを先生はすっかり忘れていたので今から大急ぎで準備をしたいと思いまーす」
今はLHRの時間で担任の急な言い出しにクラス一同唖然。
「あと4日!?間に合うわけねぇじゃねぇか!!」
「あ〜うるせぇから多串君はマジ黙ってて。時間がねぇからサクッと進めるぞ」
「悪いのお前だろ!?」
大体3Zはこんなもんだから今更焦るなんて事は無いんだけど。文化祭なんて参加する気はねぇし。
「で、文化祭実行委員決めなきゃならねぇんだよ。だから独断と偏見で俺が勝手に決めといたから。
沖田と神楽頼むな」
へ?今一番関わりたくない奴と?
俺に拒否権くらいあるよな?
「ちょっ、先生!何で俺達!?」
「お前等は授業中寝過ぎなんだよ。その罰」
「だからってチャイナと!?」
「何だよ、神楽とじゃ不満かぁ?失礼な奴だなー、なー?神楽?」
チャイナも嫌だろ?チャイナが断れば俺達が実行委員にもなるのも免れるかもしれない……
「私やっても良いヨ」
こいつもこんな面倒事は嫌いだと思ってた。まさかやるって言うのかよ…。俺、お前の事無視したんだぞ?
「でも、沖田は私とやるの嫌みたいネ。別の人とやるヨ」
「別の奴ってやりたい奴居るのか?」
こんな面倒な仕事はやりたくないとばかりに顔を背ける。
その時教室の後ろのドアが開き、遅刻だというのに堂々と入ってきて自分の席に座った男が一人
「高杉とやるネ!」
「は?何を?」
学校に来たばかりなのに急に話しを振られた高杉は不機嫌そうに神楽を見た。
「まぁ、高杉も出席日数足りねぇからなぁ。おっし、んじゃ高杉と神楽に決定ー。しっかり働けよー」
「おい 何をだよ。俺何も聞いてないぞ」
無事委員も決まり、やっかいな役職にならずに済んだ生徒達はさっきまでの我関せずといった雰囲気はなくいつもどうりのガヤガヤした教室に戻った。
チャイナが高杉の元に駆けていった。両手を顔の前で合わせて声は聞こえないが、どうやら謝っているようだ。
高杉は…しぶしぶOKしたらしい。
傍観している俺の元に銀八が近付いてきた。
「沖田君、あの拒否り方は無し、な」
「!俺は別に…」
「神楽は…傷ついても顔には出さないだけだからさ。あいつの事好きでもねぇんなら半端な気持ちで近付かないでやって」
悔しいけど銀八には何も言い返せない。
文化祭まであと4日
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