14.
もう少しで5時間目が始まるチャイムが鳴る。
いそいそと弁当箱を片付けると屋上のドアを開け、教室に向かう廊下を彼女と歩く。
どちらからとも無く自然に繋がる手と手
俗に言うカップル繋ぎだ
彼女の方は好きだと言われただけで満足したのか、先程までとはうってかわってニコニコしている。
(女って言葉だけで満足出来んのか?)
もう少しで教室に着くという曲がり角の向こうで何やらもめているような声が聞こえてきた。
あまり関わり合いになりたくないなと、思い見ないフリを決め込もうとしていた。
「あ」
もめ事の中心に居たのは、神楽であった。違うクラスの男子数名に囲まれていた。一人は神楽の白い細腕を掴んでいるようだ。
「離すアル!汚い手で触るナ!セクハラで訴えるアルよ!」
「いいじゃ〜ん。神楽ちゃん可愛くなったよねー。前から眼鏡なんていらないと思ってたんだよー」
「眼鏡を侮辱して良いのは私だけアル!新八は地味だけど良い奴ヨ!ツッコミは必要ネ!」
「いや、そっちの眼鏡じゃなくて…」
どうもチャイナの変わり様(性格はそのままだが)に軟派な男子生徒達が絡んでるようだ。
「てかお前等何アル?用事って言って呼び出して…。何も無いなら帰るアル」
「ちょ、待ってよ〜。用事ならあるってば〜!俺達と今度遊びに行かない?勿論全部奢りでさっ」
そう言うとリーダー格みたいな男子が神楽の腕を引っ張り、自分の方に寄せようとした。
「!!やっ!」
神楽は昨日の知らない男子生徒とのキスで恐怖心が芽生えていた。
力も神楽の方が上であるが、体が示す拒絶が自分の力までを制限してしまっている。思うような力が出なく、抵抗できない。
「―ホントっ止め……!あっ、沖田!調度良かったネ!お願い助け、 ………」
――スッ
沖田達の存在に気付いた神楽は沖田に助けを求めるが、そのまま素通りして行ってしまった。
「…お、きた?――助け………て、」
手を繋いでいる二人の後ろ姿を神楽はただただ、見つめるしかなかった。
「あいつ3Zの沖田だろ?彼女めちゃくちゃ可愛いよなァ。良いなぁ、1回で良いから神楽ちゃんと二人両脇にはべらかして歩いてみてえなぁ」
ギャハハハ!!とその場に居た男子生徒が下品な笑い声をあげる。
神楽を忘れて馬鹿話しを始めた。
「………っと、教室戻るアル」
男子生徒をその場に置いて、神楽は教室にと足を進めた。
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「神楽さんを助けなくて良かったの?」
神楽達の声が聞こえなくなった辺りで彼女が尋ねた。
「本気で困ってたみたいだったのに…」
「あいつは大丈夫でさァ。自分でなんとかするだろ」
彼女の握る手が一瞬きゅっと強くなったが、もう少しで教室に着くという所で手を俺から離した。
「…じゃ」
「またね」
彼女のクラスの前で別れ、俺も教室に戻った。
チャイナに会うの気まずいな…。
やっぱ助けてやればよかった…。昨日の今日だし"恐怖"が顔から滲み出てた。
…でも、
チャイナとの接し方忘れちまった…
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