12.
「おっはよーアル!!」
「おはよう…ってあら!神楽ちゃんどうしたの?」
「えへへ、ちょっとイメチェンアル」
朝登校してきた神楽の異変に最初に気付いたのはお妙だった。
いつもなら瓶底眼鏡で二つのお団子に髪飾りがチャームポイントの神楽だが、今日は眼鏡もなく、ピンクの髪も下ろしていた。
「流石に髪は切れなかったネ…」
「髪?だめよ神楽ちゃん!そんなに綺麗な髪なんですもの、切ったりしたら勿体無いわ」
「ありがとアル!姉御」
何にも無かったかのように振る舞う神楽だが心の中は昨日の事を忘れようと必死だった。
よく女の子は失恋の痛手を髪を切って忘れるとか、昔から言うけど私にはそんな勇気はなかった。
だって告白すらさせてもらえずにフラれちゃったんだもの…。
「おっ妙さぁ〜ん!!おっはよ〜ございま〜す!!」
剣道部の朝練が終わり朝一にお妙に抱きつくのが近藤の日課になっており、
「朝から……うるせぇんだよ!!!」
「おぶぎゃっ!!」
その近藤を殴り飛ばすのがお妙の日課になっていた。
「朝からホントにうるさいわね。迷惑ったらありゃしないわ」
「フフフ、朝からなかなかのバイオレンスな愛情表現ですね…お妙さん。でも俺は受け入れてみますよ!どんなお妙さんでも愛してます!」
「それが迷惑って言ってんだよ!」
近藤に続き土方、沖田が教室に入ってきた。
「近藤さん…またかよ」
呆れるしか無いな、と土方は近藤をほったらかして自分の席に戻った。
「まぁまぁ土方さん、あれでも近藤さんは頑張ってるんでさァ。報われないけど」
沖田は近藤に目を移し、お妙を見た後隣にいた神楽に気がついた。
いつもと雰囲気が違う…。
「はよ…」
「おぅ!おはよっ!」
そう言うと神楽は下ろしている髪をフワッとさせ、席に戻った。
「…何でィ。ホントに無かった事にしやがったのか…」
「んっ!?誰かと思ったらチャイナさんだったのかぁ。全然雰囲気違うじゃないか」
「そうなんですよ。急にイメチェンだって言って。好きな子でも出来たのかしら。ねぇ、沖田さん?」
急に振られた沖田ははにかみながら、そうですねとしか返す事ができなかった。
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