09.
「あれ?何で土方さんが居るんでィ?」
「副部長が部活に出てておかしいかよ…」
神楽が呼び出されたのは今日の放課後のはず。だがなぜか呼び出したはずの本人、土方が普通に部活に出てるのだ。
「あ、いや、土方さんチャイナと待ち合わせしてるんじゃないですかィ?昨日メールしたでしょ?」
「んぁ?…あぁ、したした。でもあれ俺じゃねぇよ。頼まれて呼び出した」
「えっ!土方さんじゃねぇの!?」
てっきり土方さんが呼び出したんだと思った…。てことは誰だ…?
「…誰が呼び出したって顔してんなぁ。気になるか?」
「いや…別に…。物好きな奴も居るもんだなと思いましてねィ。あんな怪力大食い酢昆布娘のどこがいいんでィ…」
「お前知らねぇの?チャイナって割とモテるぞ?今まで男子達が大人しかったのはお前と付き合ってると思ってる奴が多かったからだよ」
土方さんのあり得ない発言で思わず防具を落としてしまった。
俺とチャイナが付き合ってる!?まさか!俺達はただ気が合うだけの…友達だし…。
「でもお前最近彼女作ったろ?付き合ってないと解ったら紹介してくれって奴がたくさん俺ん所きて、な…」
「…へー、そんな風に見えてたんですかい。俺達はただの悪友でィ。まだ、あいつには恋愛とか甘酸っぱい物は早いですよ。酢昆布で十分ですぜィ」
「ふ〜ん。その悪友に彼女できてまで執着してんのはどこの誰ですかねー」
背後から聞こえてきた第三者の声の主は紛れもなく自分のクラスの担任で、部室に煙草をふかしながら土足でドアの横に立っていた。
「…土足は止めてくだせェ。仮にもここは部室なんで」
「あー、わりぃ。でも沖田君にちょっと用事合っただけだから」
「何ですかィ?今から部活なんで早く言って下せェ」
「お前と神楽今日日直だろ?二人して1日中寝てたけど。神楽はまだ教室居たから2人で日誌持って来いよ」
銀八はじゃあなと手を振り部室から離れていった。
今日日直だったの忘れてた…。つーか今から教室いったらやばいだろ。
――でも………
「つー訳で土方さん!俺日直の仕事あるんで部活休みます!さよーなら!」
土方に有無を言わさず、大急ぎで部室を出て教室へ向かった。
後ろから土方の怒声が聞こえてきたが気にしない。
最悪の場面に出会さないことを祈りながら教室へ向かう足取りは早まる。
いつのまにか3Zの教室の前に立っていた。戸を開けようと手をかけると男女の話し声が聞こえてきた。
――…やっぱ邪魔するもんじゃねぇな…
沸きだしていた悪友の色恋沙汰に対しての好奇心が急に萎みだした。
銀八には悪いけど日誌は明日出そう。
そう思い教室から離れ、元来た道を帰ろうとしたその時――
『いやっ!!』
さっきのはチャイナの声?
「…チャイナ?」
思わず体が動いてしまった。
教室を開けたら信じられない光景が広がっていた…。
10.へ