02.
「あーーっ!!」
「どうしたの!?神楽ちゃん!?大きな声だして?」
「姉御ぉ…お弁当忘れたアル…。」
何たる失態…。私とした事が教科書より、ノートより大切なお弁当を忘れてしまうなんて。朝寝坊して制服に着替えるだけでいっぱいいっぱいだったのだ。
「まぁ。まだ購買にパン残ってるかしら?もうこんな時間だし…。」
「一応行ってみるアル!!」
大体パンなどは昼休みに入る前の3時間目の休み時間に売り切れてしまう。わずかな可能性に賭け、私は財布を握りしめ、購買に向かおうとしたその時...
「おい、待てよチャイナ。俺の弁当やる。」
「えぇぇっ!?」
「何だよ…、その反応…。やらねぇぞ。」
「欲しいアル!!でも、」
お前のはどうするアルか?と聞こうとしたその前に聞きたくもなかった答えが返ってきた。
「俺は彼女が作ってきた弁当食ったからもう腹いっぱいなんでィ。」
私はお弁当に伸びかけて腕を引っ込めた。あぁ、そっか。私のために、ただ自分のお弁当なんかくれるわけない。そんな事、前から解りきってた事なのに、最近はちょっとした事で舞い上がってしまって忘れてた。
「や、やっぱいらないネ!」
「はぁ?なんで。別にやるって言ってんだから素直に貰っとけばいいでさァ。」
「お腹減ってないアル!それにおやつに酢昆布持ってきてたネ。それで足りるヨ」
「いつもの食欲見て、俺は足りると思えねぇんですけど。」
「と、とにかく大丈夫アル!!お前に恵んでもらう程落ちぶれてないネ!」
「ほ〜、言ったな、チャイナ。後でやっぱくれ、って言っても絶っ対やらねぇからな。」
「いらないアル!!……そんな弁当…。」
優しくされても絶対これ以上好きになっちゃ駄目だ
彼女の存在を忘れちゃ駄目だ
03.へ