「和谷はどれくらい彼女の事を知ってるんだ?」

「名前ちゃんの事?」

「あ、名前は聞いたのか」

「んーん、店長さんがそう呼んでた分かっただけ」


まさか、まさかだよ伊角さん!

こんな俺が名前ちゃんの名前なんて聞き出せる筈がないよ。だって、まともに会話したのなんて「合計で○○円です」「はい、これで」と言うマニュアルっぽい会話だけなんだから!


「……可愛い?」

「そりゃもう、めっちゃくちゃ可愛い!」

「何が?」

「「え?」」

「和谷も伊角さんもコソコソしちゃってさー!俺も仲間にいれてよ!」

「進藤はダメ!」

「なんでよ、和谷のケチ!」

「ケチで結構!」

「まぁまぁ二人とも」


当たり前だっつーの。進藤なんかに話したら明日ココに来れないし。絶対にコイツ皆に言いふらすに決まってる!しかも無意識にやりそうだから尚達が悪い!(ったく、天然ほど怖い物はないとつくづく思う)


「じゃー伊角さん、俺、今日の分の対局終わったから帰るわ」

「うん、分かった。気を付けてな。…今日は寄ってくのか?」

「い、一応……」

「切っ掛け、出来るといいな」

「ありがと、じゃぁまた明日」

「ねー、俺はぁ?」

「帰りにどっか連れてってやるから」

「よっしゃー!じゃぁ早く行こうよ、伊角さん!」

「はいはい」


ヒラヒラ、ヒラヒラ

若干の苦笑いを貼り付けながら軽く手を振り進藤を連れて去っていく。後ろ姿が保護者と子供って感じでこっちまで苦笑いだ。


「よし」


今日こそ話し掛けられればいいな。

そう思いながら、作ってもらった時間を有効に使う為にも予め用意しておいた荷物を肩に引っかけ素早く建物を出て行った。




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