追懐せんせーしょん 生きることや死ぬこと、繋ぐことや奪うこと。大切なのはそんなことじゃなくて。 散漫する意識をいちいち手繰っては、見て、触れて、感じて、想う。 それはなんて難しいことなんだろう。 その意識の破片を濁流に投げ捨てながらいい加減に生きてきた俺と違って、お前はいつでも几帳面で生真面目だったから。哀しみも痛みも一つ残らず受け止めて、乗り越えて、独りで強くなっていく。 そんなんだからお前はこんな取り返しのつかない電波バカになっちゃったのよ。 もう二度と会わないなんて勝手に決め込んでもみたけど。 こちらの気も知らないである時ひょっこり現れたかと思えば、空疎でのどかなこの日常を傍若無人に掻き乱しはじめた。今ではこうして手土産片手に家まで押しかけてきては、かまってちゃんよろしくソファーに凭れて漫画を読む俺の背後に回り込んでくる始末。 あの頃とは違う平淡で穏やかで、ちょっぴり甘さを含んだ誘う声に。今はそんな気分じゃない、なんて。思ってもいない言葉を投げて首元に回された手を振りほどいてみたりもできる、そんな俺とお前の現在における奇跡的な関係性が。本当は何よりも愛おしかったりするんだよね。 雑誌を放って目の前にある顔を引き寄せて。驚いてうっすら開いた口に強引に指を突っ込んでざらつく舌を追いかける。 そうそう、その研ぎ澄まされた純粋で。見て、触れて、感じて、俺を、想って。 溢れた唾液をすくい取るように下唇をゆっくりとなぞれば、揺らめく鳶色の目に誘われて。 こうして今日も巷を賑わす物騒なテロリストを抱えこみ、平和で退屈な日常はほんのり色付きながら壊れてゆくのです。 銀桂は安定感が半端ないですね。まあ、公式ですしね!笑 >>戻 |