Twi再掲その3



シャワーの後


 名前は泣き虫だ。ボクがちょっとでも怪我をしていると血相変えて取り乱す。いくらかすり傷だと言っても聞きやしない。そしてそれを黙らせるのに『伸縮自在な愛』や『薄っぺらな嘘』は、おあつらえ向きな能力だった。
 都合の悪いものは隠せばいい。
 興味本位で一度だけ目の前で『手品』をしてみせたら、以降余計に疑ってかかるようになった。酷いなあ。
「ーーもしもし、ボクだけど」
 かけ慣れた番号を押すと、ワンコールで不機嫌な声が聞こえた。
「お腹空いちゃった。何か作りに来てよ。外食? やだよ、飽きちゃった。じゃ、ヨロシク」
 一方的に用件を言うと、非難する声を無視して電話を切る。

 だって会いたいなんて言ったって信じないだろ?

 あの子は弱くて脆いけど、ボクなりに愛着は持っている。子供が犬猫を欲しがるのと同じようなものだ。飽きたら捨てる。だけど、多分。
「さて、と」
 その前に、ボクは名前を置いていく。
 時刻は23時44分。マジックショーを始めよう。



(20201011 再掲)
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