※Twi再掲その1/名前変換ありません



影踏


 日が暮れようとしている。
 家族に帰りを告げる穏やかな話し声がすぐそばを通り過ぎて、我に帰った。
 青と紫と茜色。気まぐれな雲が描く一瞬の芸術を眺めていた視線をヒソカに戻す。逆光で表情は見えない。名前を呼ぶと、ヒソカは首を横に振った。
「まだ、もう少しだけ」
 もう何度目だろう。
 私達は話をするでもなくただそこにいた。足許の二つの影は私とヒソカの境界線を失って街の中へ溶けていく。
 ヒソカは嘘つきだ。泣きたいのはどちらだ。別れ難いのは、どちらだ。



(20201011 再掲)
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