誕生日企画2015
※TS主人公は中身が腐女子
「誕生日おめでとう、マルコ」
そんな言葉と共にナマエが差し出してきたリボンのかかった包みを、マルコはその手で受け取った。
今日は彼の誕生日で、そしてそのために用意されたのだろうナマエの差し出している包みは、随分と可愛らしい装丁をしている。
少女が好みそうなそれは、マルコしか知らないナマエの『出自』を考えれば当然とも言えるもので、それを見て笑みを浮かべたマルコが、視線をナマエの方へと向けた。
「開けてもいいかい」
問いかければ、ナマエがこくりと頷く。
それからその目がちらりとマルコのベッドに積まれている贈り物の山へと向けられて、開いてる奴は好きに見ていいよいとマルコが言葉を放つと、ナマエがそろりとベッドへと近寄った。
「……お酒が多いんだ」
「まあ、一番無難だからねい。そこの一番でけェのはサッチからだよい」
ベッドの横に置かれたナマエの腰ほどの高さのある酒瓶を示してマルコが言うと、ナマエの目がその酒瓶へと向けられた。
何かを確かめるようにラベルを確認した後、ちら、とマルコを見やったナマエにマルコが首を傾げると、何でもないとその目が逸らされる。
「……こんなに強いの飲んだら、マルコがまた酔っ払っちゃうのに」
それからぽつりと聞こえた声に、一気に飲むわけじゃねェよい、とマルコが肩を竦める。
それもそうか、と頷いて、そのままマルコが放り出したいくつかのプレゼントをしげしげと検めるナマエの背中に、マルコはわずかに笑みを零した。
誰も彼もから好かれているとは言わないが、それなりに好意を向けられている証でもあるマルコへの誕生日プレゼントは、多種多様で様々だ。
メッセージカードが付いているものもいくつかあったし、ナース達から差し出されたものもあった。
女から渡されたと言えばナマエが嫉妬の一つでもするだろうかと考えつつ、マルコの手が手元の包みを開く。
そうして出てきたものに、ぱちりとその目が瞬きをした。
「………………靴下?」
「次、冬島だって聞いたから」
思わず呟いたマルコの声に、ナマエが振り返ってそう答える。
サイズはあってると思うけどと続いた言葉に、タグを確認したマルコは一つ頷いて、それからその目をナマエへと向けた。
じっと見つめてみても、ナマエには何一つ他意など見当たらない。
大体外では裸足に近い恰好で過ごしているマルコを気遣ってのものだろうと言うことは、その顔を見てすぐに分かった。
しかし、にやりと口元を笑みに変えたマルコの手が、ナマエへ掌を晒して、指先で相手を招く。
不思議そうにしながらも大人しく近寄ってきたナマエへ手を伸ばし、服を掴んで引き寄せると、わ、と声を漏らしながら体を傾がせかけたナマエの手が、机について自分の体を支えた。
「マ、マルコ?」
どうかしたのかと驚きと戸惑いを浮かべるその顔を下から見やってやって、マルコの手が持っているナマエからの贈り物を相手へと見せる。
「ナマエ、男に靴下を贈る意味分かってんのかい?」
十中八九分かっていないだろう相手へ向けて尋ねれば、ますますナマエの顔は困惑に染まるばかりだ。
それを見あげたマルコの手が更に掴んだ服を引き寄せれば、び、と嫌な音を立てた服に慌てたナマエが体を傾がせる。
近寄ってきた相手の顔を見つめると、わずかにその頬を上気させたナマエが、何かを覚悟するようにぎゅっと目を閉じた。
目の前に現れた据え膳に笑いつつ、それは喰らわずさらに引き寄せた相手の耳元へと口を近付けて、マルコが優しく相手に囁く。
「『体を好きにしていい』ってんなら、もう二、三足貰ってやってもいいよい」
楽しげに響いたマルコの声に、びくりとナマエの体が震えた。
すぐ傍にある耳まで赤くなっていく相手にくくくと喉を震わせたマルコの前で、ほとんど机の上に横たわりそうなほど前のめりになってしまったナマエが、小さく声を絞り出す。
「イ、イゾウだってエースにあげてた……っ」
参考にしただけなのだからノーカウントとでも言いたいのか。
もちろんそんな主張など聞いてやるつもりのないマルコは、恥ずかしげに目を伏せたナマエの体をそのまま机の上へと引きずり倒してやった。
end
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