(B)
※ロー捏造注意
※『プレゼント志願』のロー視点
誕生日など、祝ったりするものでは無いと思っていた。
家族を亡くし、大事なものすらも奪われたのはもう随分と過去のことだ。
逃げ続けた日々、大人になる未来など知らなかったおれにとって、誕生日というのは一歩一歩死に近付いたということを示す日でしかなかった。
手に入れた能力を使い、死に怯えなくてよくなってからも、それは変わらない。
あの日生き延びて、ドフラミンゴの下を飛び出し、逃げた先で自分の海賊団を作って慕ってくれる仲間を手に入れた。
それでもなお、自分の生まれた日を祝うことなど、一生無いと思っていたのに。
「…………誕生日は祝うものだろう?」
簡単に言ってくれるものだ。
そして、たかが一人に『おめでとう』と言われただけで、じわりと喜びを感じた自分の手軽さにも嫌気がさす。
けれどもそれは、仕方の無いことだった。
おれの『誕生日』をどうしてか知っているこの男だって、おれが何を抱えているのかなんて知らない。
おれが自分の誕生日を誰にも言っていなかったことに気付いているくせに、何も言わない。
おれを取り囲む他の奴らもそうだ。
ここには、おれを『トラファルガー・ロー』として見て、祝ってくれる奴らしかいない。
馬鹿馬鹿しい。
ずっと、今日という日を避けていた自分が、馬鹿馬鹿しくて仕方ない。
礼を言わずともおれの顔がゆるんだのが分かったらしく、傍らのベポが嬉しそうな顔をしたのが見えて、顔を隠すようにジョッキを傾けた。
今日は久しぶりに、悪い夢を見ずに眠ることができそうだ。
end
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