相手:めいおーレイリー
「ほう、誕生日」
いつものように『自由に行動しろ』と言い渡されて置いて行かれた町中で、ナマエが遭遇したのは以前一緒にクレープを食べた『めいおー』だった。
見知った姿に思わず近寄ったナマエを見下ろしたレイリーが優しげに笑ったので、思わず相談を持ち掛けてしまったナマエが、こくりと頷く。
「何、あげたらいいと思う?」
とても真剣に尋ねられて、少しばかり目を丸くしたレイリーが、なるほど、と声を漏らす。
「随分と真剣に悩んでいるんだな、ナマエ」
「うん」
寄越された至極当たり前の言葉に、ナマエは深く頷いた。
ドフラミンゴにプレゼントを渡したいと思った日から、ナマエはずっとそのことばかり考えている。ドフラミンゴに喜んで欲しいからだ。
思えばそんな風に思って贈り物を選ぼうとすることなんて初めてで、どうにもこうにも何を買ったらいいのか考えがまとまらない。
すがるようにレイリーを見上げたナマエを見下ろして、ふむ、とレイリーがわずかに頷いた。
「悩むのはいいことだが、もはや考えがまとまらな過ぎて限界と言った顔だな」
ナマエの顔を見下ろしただけでそこまで見抜いたらしい冥王は、いいことを教えてあげようか、と優しく囁いた。
落ちてきた言葉にぱちりと瞬きをしたナマエへ向かって、少し身を屈めたレイリーが、こっそりと言葉を落とす。
「君は随分と大事にされている」
誰に、とも言わず言葉を紡いだレイリーに、ナマエは不思議そうな視線を向けた。
それを見つめ返して、だから、と言葉をつなげたレイリーがさらに言う。
「君が渡したものなら、ドンキホーテ・ドフラミンゴも大体の物には喜ぶだろうな」
「……なんでも?」
「ああ、もちろん。おめでとうと言って抱き付くだけでも喜びそうなものだ」
呟いたナマエへそう答えて、ひょいとレイリーが身を起こす。
言われた言葉を吟味して、ううん、とナマエはもう一度首を傾げた。
おめでとうなんて言うに決まっているし、抱き付いたくらいでドフラミンゴが喜んでくれるものだろうか。歩幅が全く違うナマエを連れて歩くとき、合わせて歩くのが面倒らしいドフラミンゴはよくナマエを抱えて歩くのだ。
今更じゃないだろうかと考え込むナマエに、まあ他に何か買いたいと言うなら時間もあるし付き合おうか、なんて珍しいことを言って、レイリーがナマエへ歩き出すことを促した。
よく分からないまま頷いて、まだ悩みながらも、ナマエは促されるまま歩き出す。
「フッフッフ! どうしたナマエ、珍しいなァ!」
レイリーの言葉が正しかったことを知ったのは、ドフラミンゴの誕生日当日のことだった。
end
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